面白い 銀色の夢、青の地球 杉山遼は、幼いころからずっと、宇宙服に憧れていた。初めて宇宙の映像を見たのは、小学一年生の冬。テレビに映る国際宇宙ステーションと、そこに滞在する宇宙飛行士の姿に、息をのんだ。無重力の中でふわふわと漂う彼らの背中にある白い宇宙服――分厚く、機... 2025.07.12 面白い
面白い マリーゴールドの手紙 祖母の庭には、毎年夏になるとマリーゴールドが咲き誇った。橙と黄色の混ざったその花たちは、まるで太陽の欠片のようにまぶしく、子どもの頃の私は、それを見るたびに心が浮き立ったものだった。高校を卒業し、東京の大学に進学した私は、地元に帰ることが少... 2025.07.12 面白い
面白い バケットハットと夏の追憶 蒼井遥(あおいはるか)は、バケットハットが好きだった。きっかけは、小学五年生の夏休み。母親が近所の手芸教室で作ってくれた、白地にひまわり模様のバケットハットが始まりだった。それを被ると、夏の匂いが一気に広がった気がした。照りつける太陽、アス... 2025.07.11 面白い
面白い 風の色はミントグリーン 夏が近づくと、風の中に微かにミントの香りが混じる。それは彼女の記憶と結びついていた。佐倉遥(さくら・はるか)は都会の喧騒に疲れ、郊外の小さな街に引っ越してきた。職場はリモート勤務に切り替わり、必要最低限の人との関わりだけで済む。心をすり減ら... 2025.07.10 面白い
面白い 風にゆれるポピーの庭 春の終わり、風が柔らかく頬をなでる頃になると、町外れの古い洋館の庭には、一面に赤いポピーの花が咲き乱れる。洋館に住むのは、七十を過ぎた女性・和子だった。和子は毎年、庭のポピーが咲くのを誰よりも楽しみにしていた。朝起きてすぐ、まだ露をまとった... 2025.07.09 面白い
面白い 電車の窓から世界を 佐伯拓海(さえきたくみ)は、子どものころから電車に乗るのが好きだった。特に目的地がなくても、ただ電車に揺られている時間が好きだった。家族旅行で乗った特急のふかふかの座席、高校時代に通学で使った満員の各駅停車、大学の夏休みに一人で乗った鈍行列... 2025.07.08 面白い
面白い くまのアトリエ 部屋の窓辺に、小さなアトリエがある。針と糸、色とりどりの布、そして壁一面に並んだぬいぐるみたち。そこは、山口春(やまぐちはる)という女性の特別な場所だった。春は三十二歳。会社勤めをしていた頃もあったが、今は自宅でぬいぐるみ作家として暮らして... 2025.07.07 面白い
面白い 柱の音を聴く男 幼い頃、健太は父の大工仕事を手伝うのが好きだった。トントンと木槌を打つ音、削られていく木の香り、柱が組み上がるたびに大人たちが交わす「よし!」という掛け声。あの音と匂いと空気が、健太の心に深く刻まれていた。しかし健太が中学に上がる頃、父の工... 2025.07.07 面白い
面白い 継ぎはぎの記憶 小さな町のはずれに、「糸の記憶」という名前の古びた手芸店がある。店主は七十を越えた女性、佐和子さん。白髪を後ろにまとめ、淡い花柄のエプロンをつけた彼女は、いつも店の奥で静かにパッチワークを縫っている。佐和子さんのパッチワークには、不思議なあ... 2025.07.05 面白い
面白い 白い月、チーズの香り 陽子は都会の喧騒から逃れるように、静かな港町に移り住んだ。背中を押したのは、祖母の遺した古い家と、焼き菓子づくりへの飽くなき情熱だった。会社勤めに疲れたある日、陽子は祖母の古いレシピノートを読み返しながら、ふと決意した。「チーズケーキだけの... 2025.07.05 面白い食べ物