面白い

世界の端っこで待ち合わせ

世界の端っこは、地図のどこにも載っていない。けれど、確かにそこへ行く道はあって、たとえば夕焼けが少しだけ長く続く日や、帰り道の影がやけに伸びる日に、ふと見つかることがある。わたしがその場所を知ったのは、一通の手紙がきっかけだった。「世界の端...
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月が転がる夜の追いかけっこ

月が転がる夜は、たいてい誰にも見つからないところから始まる。その夜、ぼくはいつもの帰り道で、靴の先に何か丸いものをぶつけた。コツン、と乾いた音がして、足元に目をやると、それは白くて、やわらかく光る球だった。「……え?」見上げると、空には月が...
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雨を止めるための七つのうそ

雨が降り続く街では、だれもが「ほんとう」を大切にしていた。だからこそ、雨は止まなかった。空は、ほんとうを重たく抱えすぎて、涙をこぼし続けているのだと、古い図書館の司書は言った。「雨を止めるには、七つのうそが必要だよ」ぼくは半信半疑のまま、そ...
冒険

うっかり勇者と忘れられたラスボス

その勇者は、世界を救うには少しだけ――いや、だいぶうっかりしていた。名前はユウト。村を出るとき、剣を忘れ、引き返して取りに戻り、その帰り道で今度はマントを置いてきたことに気づいた。結局、三度目の出発でようやく旅が始まった。「大丈夫かな、この...
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迷子のドラゴンと放課後の地図

放課後、教室の窓はすこしだけオレンジ色に溶けていた。黒板の端に残ったチョークの粉が、夕方の光を吸いこんで、まるで小さな星みたいにきらきらしている。ぼくはランドセルを背負いながら、ため息をひとつついた。きょうは、なんとなくまっすぐ帰りたくない...
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空を落とした日の探しもの

あの日、空は落ちた。最初は、だれも気づかなかった。朝はいつもどおりで、パンの焼けるにおいも、遠くの電車の音も、変わらなかったからだ。ただ、窓を開けたとき、ぼくは少しだけ違和感を覚えた。空が、低い。手を伸ばせば、触れてしまいそうなほどに。「ね...
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ちいさな『ありがとう』が迷子になる日

その日、町じゅうの「ありがとう」が、ふっと軽くなった。朝、パン屋のおばあさんは、いつものように焼きたてのパンを並べながら、「今日も来てくれてありがとうね」と言ったはずだった。けれど、口から出たその言葉は、湯気のようにすぐにほどけて、ふわりと...
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しあわせは湯気のむこうにある

しあわせは、だいたい見えにくいところにある。たとえば、湯気のむこう。冬の朝、台所に立つと、やかんの口から白い湯気がふわりと立ちのぼる。窓の外はまだ薄暗く、雪は音もなく降り続いている。わたしはストーブの前で手をこすりながら、その湯気の向こうを...
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きみと半分こしたひみつ

夕暮れの帰り道、きみはポケットから小さなガラス瓶を取り出した。中には、ほんのり光る何かが入っていて、揺れるたびに淡い音がした。「これ、ひみつなんだ」そう言って、きみは少しだけ笑う。風が吹いて、並んで歩く影が長く伸びた。「ひとりで持ってるとね...
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あくびを分けあう帰り道

夕焼けがゆっくりと街の輪郭をやわらかく溶かしていく帰り道、わたしときみは並んで歩いていた。今日の空は、少しだけ眠たそうな色をしている。「なんか、あくび出そう」きみがそう言った瞬間、ほんとうに小さなあくびがこぼれた。つられるみたいに、わたしも...