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迷子のしあわせ見つけました

商店街のはずれに、小さな掲示板がある。雨にも風にも少し曲がってしまった、古い木の掲示板だ。そこにはよく「迷い猫」や「落とし物」の紙が貼られている。その日、新しい紙が一枚貼られていた。――迷子のしあわせ見つけました。心あたりのある方は、夕方ま...
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星をひとつ借りる夜

その夜、ぼくは星をひとつ借りることにした。理由はとても単純だった。今日という一日が、少しだけさみしかったからだ。公園のベンチに座って空を見上げると、星はまるで遠くの町の灯りみたいに、静かに瞬いていた。どれもきれいだけれど、どれも遠い。「ひと...
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小さなありがとうが集まる店

商店街のはしっこに、ちょっと変わったお店がある。看板には、やわらかい字でこう書いてあった。「ありがとう屋」売っているのは、お菓子でも雑貨でもない。そのお店は、「ありがとう」を集めている。店の中には、大きなガラスびんが棚いっぱいに並んでいる。...
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きょうは風がやさしい理由

朝、窓を開けたとき、ゆうとは首をかしげた。「……あれ?」カーテンが、ふわり、と揺れた。けれど、いつもの風とちょっと違う。つめたすぎず、強すぎず、まるで誰かがそっと背中を押してくれるみたいな風だった。「きょうの風、やさしいなあ」そうつぶやきな...
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ふわふわ雲の配達便

町のはずれの丘の上に、小さな配達所がありました。看板には、少し曲がった字でこう書いてあります。「ふわふわ雲の配達便」配達員は、雲をあやつるのが得意な少年、ソラ。年は十歳くらいですが、雲の運転歴は三年というベテランです。朝になるとソラは、丘の...
動物

ねこが案内する帰り道

その日は、なんだか帰り道が長く感じられる日だった。学校を出たとき、空はもう夕方の色で、オレンジ色の光が町をゆっくり包んでいた。ランドセルが少し重く感じるのは、宿題のせいか、それとも今日の小さな失敗のせいかもしれない。ぼくはいつもの帰り道を歩...
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雨あがりのよりみち図書館

雨が上がったばかりの午後、町の空気はまだ少しだけ水を含んでいた。アスファルトの上には、小さな水たまりが空を映していて、雲がゆっくり流れている。学校の帰り道、ぼくはいつもの角で立ち止まった。本当ならまっすぐ家に帰るはずだけど、今日はなんとなく...
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ひなたぼっこ同盟のひみつ会議

春の終わりごろ、学校の裏庭には、昼休みになると特別な場所ができる。古い倉庫の壁に沿って、ぽかぽかの光がちょうどよく当たる場所だ。そこは風が弱くて、ベンチもあって、猫まで時々来る。ぼくとミナとソウタは、その場所をこう呼んでいる。「ひなたぼっこ...
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きみとパンを焼く静かな朝

朝は、まだ世界が半分眠っている時間だった。カーテンのすき間から、やわらかな光が台所の床に細長く落ちている。ぼくが目を覚ましたとき、すでに台所から小さな音がしていた。こねる音。とん、とん、とん、とん。のぞいてみると、きみがエプロン姿でボウルを...
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おやつの時間は世界がやさしい

午後三時になると、この町は少しだけやさしくなる。学校の帰り道、わたしは商店街のはずれにある古い時計台の前を通る。時計の針が三を指すと、町の空気がふわっと甘くなるのだ。最初に気づいたのは、小学三年生の春だった。「ほら、もうすぐおやつの時間だよ...