動物

ねこが案内する帰り道

その日は、なんだか帰り道が長く感じられる日だった。学校を出たとき、空はもう夕方の色で、オレンジ色の光が町をゆっくり包んでいた。ランドセルが少し重く感じるのは、宿題のせいか、それとも今日の小さな失敗のせいかもしれない。ぼくはいつもの帰り道を歩...
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雨あがりのよりみち図書館

雨が上がったばかりの午後、町の空気はまだ少しだけ水を含んでいた。アスファルトの上には、小さな水たまりが空を映していて、雲がゆっくり流れている。学校の帰り道、ぼくはいつもの角で立ち止まった。本当ならまっすぐ家に帰るはずだけど、今日はなんとなく...
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ひなたぼっこ同盟のひみつ会議

春の終わりごろ、学校の裏庭には、昼休みになると特別な場所ができる。古い倉庫の壁に沿って、ぽかぽかの光がちょうどよく当たる場所だ。そこは風が弱くて、ベンチもあって、猫まで時々来る。ぼくとミナとソウタは、その場所をこう呼んでいる。「ひなたぼっこ...
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きみとパンを焼く静かな朝

朝は、まだ世界が半分眠っている時間だった。カーテンのすき間から、やわらかな光が台所の床に細長く落ちている。ぼくが目を覚ましたとき、すでに台所から小さな音がしていた。こねる音。とん、とん、とん、とん。のぞいてみると、きみがエプロン姿でボウルを...
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おやつの時間は世界がやさしい

午後三時になると、この町は少しだけやさしくなる。学校の帰り道、わたしは商店街のはずれにある古い時計台の前を通る。時計の針が三を指すと、町の空気がふわっと甘くなるのだ。最初に気づいたのは、小学三年生の春だった。「ほら、もうすぐおやつの時間だよ...
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ひみつの屋上サーカス団

放課後の屋上は、たいてい風が強い。フェンスがきしんで、古い貯水タンクがぼうっと夕焼けを映している。そんな何もない場所に、ある日ぼくは「それ」を見つけた。給水塔の影に、小さなテントが立っていた。赤と白のしましま。子どもの背丈ほどしかない、指で...
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しあわせはポケットの中でくしゃみする

その朝、ぼくは自分のポケットがくしゃみをした音で目を覚ました。「へっくしょい!」ベッドの上で体を起こすと、パジャマのポケットが小さくふくらんで、ぷるぷる震えている。「……今の、ぼくじゃないよね?」そっと指でつまんでみると、また聞こえた。「へ...
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きみと笑うための作戦会議

放課後の図書室には、たいてい誰もいない。本の匂いと、窓から差しこむ夕方の光が、静かに積もっているだけだ。けれど、その日だけは違った。「よし、作戦会議を始めよう」机の上にノートを広げて、ぼくは言った。向かいに座るのは、クラスメイトのミナミ。少...
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おひさまを半分こする朝

朝、窓のすきまから入ってきた光が、机の上でまるい形になっていた。「……あれ?」まだ少し眠い目をこすりながら、ぼくはその光をのぞきこむ。すると光は、まるでパンみたいにふっくらしていて、手を近づけるとほんのりあたたかかった。そのとき、コン、と窓...
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明日が待ちきれない夜

その夜、町は少しだけそわそわしていた。もちろん、いつもの夜と見た目はほとんど変わらない。商店街の灯りはゆっくり消えていき、遠くで電車が一度だけガタンと鳴り、コンビニの前には自動ドアの風が静かに吹いている。でも、どこか空気が軽くて、星まで落ち...