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リボンの風が吹く町で

風の強い町だった。坂の多い地形に海から吹き上げる潮風が混ざり、通りを歩けば必ず髪が揺れる。けれど、その風が大好きだと言う人がいた。名前は紬(つむぎ)。町で小さな雑貨屋を営み、特にリボンを集めることに情熱を注ぐ女性だ。店に入ると、最初に目に飛...
動物

風に乗りたかったリス

森の外れに、小さな丘があった。そこには一本の大きなクルミの木が立ち、季節ごとに色を変えながら、森の仲間たちを見下ろしていた。その木の上に暮らしているのが、リスのピポ。ふわふわのしっぽが自慢で、好奇心が誰よりも強いリスだった。ピポには、ずっと...
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永灯《えいとう》の継承

山のふもとにある小さな集落・火ノ澄《ひのすみ》には、古くから一本の松明が受け継がれてきた。その名も「永灯《えいとう》の松明」。どれほど強い雨の中でも決して火が消えないと言われ、村人たちは祭りや大切な儀式のたびにその火を分けてもらっていた。松...
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風を結ぶポニーテール

海沿いの小さな町に、いつも髪をポニーテールに結んでいる少女・莉央がいた。彼女のポニーテールは、ただの髪型ではなく、町の人から“風を捕まえる尻尾”と呼ばれるほどよく揺れ、どんな時でも元気をくれる不思議な存在だった。中学生になった頃から、莉央は...
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風まきタツオの大騒動

その町には、ちょっと変わった“風の子”が住んでいた。名前はタツオ。といっても人間ではない。彼は――生まれたての小さな竜巻だった。タツオは風が好き、空が好き、そして何より回ることが大好きだった。だが、生まれたてゆえに力加減がまったくできない。...
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夜に咲く流れ星

夜の町は昼の顔をすっかり隠し、静けさに包まれていた。商店街のシャッターの端には、まだ乾ききらない雨粒がきらきらと光っている。そんななか、ひとりの青年がフードを深くかぶり、バックパックからスプレー缶を取り出した。名前はレン。昼間は工場で働き、...
恋愛

白銀の約束

山の空気は、冬になると少しだけきらめきを帯びる。冷たさの奥に、どこか甘い香りが混じるような——そんな気がするのは、きっとこの場所に特別な思い出があるからだ。美雪が初めてスキー場に来たのは、小学三年生の冬だった。父に連れられて滑った初心者コー...
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夕焼けを追いかける人

赤く滲む空を見つめると、胸の奥に小さな灯がともし始める——そんな感覚を初めて覚えたのは、小学生の頃だった。放課後、校庭の片隅で一人遊んでいると、夕陽が水平線に沈む瞬間、空の端が金色に揺れた。まるで世界が呼吸するようなその光景に息を呑み、気が...
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白星に触れず──エーデルワイスの願い

アルプスの山々に抱かれた小さな村・ブランネには、毎年夏になると観光客が訪れた。けれど村の人々が本当に大切にしているのは、華やかな季節でも賑やかな市場でもなく、雪解けの岩場にひっそりと咲く白い花——エーデルワイスだった。村の若者レオンは、その...
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灯りを運ぶ屋形船

東京湾に浮かぶ屋形船「みづき」は、古びた木の香りと、どこか懐かしい提灯の明かりに包まれていた。船主の川島遼太郎は、祖父の代から続く屋形船を三代目として継ぎ、今日も夕暮れの出航準備に追われていた。遼太郎が船を継いだのは五年前。サラリーマンとし...