夕暮れの帰り道、きみはポケットから小さなガラス瓶を取り出した。
中には、ほんのり光る何かが入っていて、揺れるたびに淡い音がした。
「これ、ひみつなんだ」
そう言って、きみは少しだけ笑う。
風が吹いて、並んで歩く影が長く伸びた。
「ひとりで持ってるとね、すぐ消えちゃうんだって。だから——半分こしない?」
わたしはうなずいて、そっと瓶を受け取る。
ふたを開けると、光はふわりと空気に溶けて、ふたりのあいだに小さな粒となって浮かんだ。
ひとつ、またひとつ。
それは、声に出さなかった言葉の形をしていた。
「さっき言えなかったんだけどさ」
きみが、少し照れくさそうに言う。
「今日、いっしょに帰れてよかった」
その瞬間、光の粒がひとつ、わたしの胸のあたりにすっと入りこんだ。
あたたかくて、くすぐったい。
「あ、ずるい。先に言った」
わたしがそう返すと、きみは肩をすくめて笑う。
「じゃあ、そっちの番」
言葉にしようとして、少しだけ迷う。
けれど、胸の中に灯った光が、そっと背中を押してくれた。
「……わたしも」
それだけしか言えなかったけれど、残りの気持ちは全部、光になってこぼれた。
きみのほうへ流れていく。
きみはそれを両手で受け止めて、少し驚いた顔をして、それから大事そうに胸にしまった。
「ちゃんと、届いた」
その声はやわらかくて、まるで夕焼けみたいだった。
気がつくと、瓶の中はもう空っぽだった。
「ほらね、半分こしたら消えないでしょ」
きみはそう言って、空の瓶を空にかざす。
すると、いつのまにか増えていた光の粒が、ふたりのまわりをゆっくりと回り始めた。
それはさっきよりも、ずっとやさしく、ずっとあたたかい。
「これからも、ためていこう」
「うん、半分こで」
歩き出すと、光はわたしたちについてきた。
影のすきまを埋めるように、足元を照らす。
言葉にしきれなかったひみつも、言えなかった気持ちも、こうして分けあえば、ちゃんと残るのだと知った。
やがて分かれ道に着くころには、空はすっかり群青色になっていた。
「また明日ね」
「うん、また明日」
手を振って別れたあとも、胸の中の光は消えなかった。
むしろ、ひとりになったぶんだけ、さっきより少し強くなっている気がした。
ポケットの中で、空のはずの瓶が、かすかに音を立てる。
きっとまた、次のひみつが生まれる合図だ。
そのときは、忘れずに持っていこう。
きみと半分こするために。


