ひなたぼっこ同盟のひみつ会議

面白い

春の終わりごろ、学校の裏庭には、昼休みになると特別な場所ができる。
古い倉庫の壁に沿って、ぽかぽかの光がちょうどよく当たる場所だ。
そこは風が弱くて、ベンチもあって、猫まで時々来る。

ぼくとミナとソウタは、その場所をこう呼んでいる。

「ひなたぼっこ同盟本部」

もちろん、本部と言っても看板があるわけじゃない。
ただ、三人で決めただけの名前だ。
でも大事なのは名前じゃない。
昼休みにそこへ集まって、ひなたぼっこをすること。
それが同盟のルールだった。

ある日、ミナが小さなノートを持ってきた。

「今日はね、ひみつ会議をします」

ぼくとソウタは顔を見合わせた。

「ひなたぼっこするだけじゃないの?」

「するよ。でも今日は議題があるの」

ミナはノートを開いた。
表紙には丸い字でこう書いてある。

ひなたぼっこ同盟 会議記録

なんだか本当に秘密の組織みたいだ。

「議題その一」

ミナが指を一本立てた。

「最近、ひなたぼっこの質が落ちています」

「質ってなに?」

ソウタがパンをかじりながら言う。

「集中力!」

ミナは真剣な顔だった。

「この前ソウタはゲームの話ばっかりしてたし、あかね(ぼく)は宿題のこと考えてたでしょ」

図星だった。
ぼくは空を見上げてごまかした。

「ひなたぼっこはね、ちゃんと太陽を感じないとだめなの」

ミナは腕を組む。

「だから提案。五分間の静かなひなたぼっこタイムを作ります」

「しゃべっちゃだめ?」

「だめ」

ソウタが大げさにため息をついたけど、結局やることになった。

三人でベンチに並んで座る。

しゃべらない。
ただ、光の中にいる。

最初はなんだか変な感じだった。
でも少しすると、校庭の音が聞こえてきた。
遠くのサッカーボールの音。体育館のドアのきしむ音。
風で揺れる木の葉。

それから、ぽて、と何かがベンチに飛び乗った。

あの灰色の猫だった。

ソウタが吹き出しそうになるのを、ぼくはひじで止める。
五分間ルールだから。

猫はぼくたちの真ん中で丸くなった。まるで会議に参加しているみたいに。

やがてミナが静かに言った。

「……はい、終了」

ソウタが大きく伸びをした。

「なんかさ」

「うん?」

「めちゃくちゃ眠くなる」

ミナが満足そうにうなずく。

「それが正しいひなたぼっこです」

ノートに何かを書き込む。

「議題その二」

「まだあるの?」

「あります」

ミナは空を見上げた。

「この場所、みんなに教える?」

ぼくとソウタは同時に首をかしげた。

確かに、ここはいい場所だ。昼休みなのに静かで、あったかくて、猫も来る。

でも、人が増えたらどうなるんだろう。

しばらく考えて、ソウタが言った。

「半分だけ教えるのは?」

「半分?」

「ほんとにひなたぼっこ好きそうな人だけ」

ミナは少し考えて、ノートに書いた。

決定:ひなたぼっこが上手な人のみ入会可

「どうやって見分けるの?」

ぼくが聞く。

ミナはにやっと笑った。

「簡単」

そして猫を指さした。

「この子が近くに座ったら合格」

ソウタが笑い出した。

「猫面接かよ」

そのときチャイムが鳴った。

昼休みの終わりだ。

ぼくたちは立ち上がる。猫だけがまだベンチで丸くなっている。

ミナがノートを閉じて言った。

「次の会議は明日」

「議題は?」

ソウタが聞く。

ミナは少し考えてから答えた。

「ひなたぼっこしながら食べると一番おいしいおやつランキング」

ぼくたちは笑いながら校舎へ戻った。

午後の授業はきっと眠い。
でもそれでいい気がした。

だって、ぼくたちは知っているからだ。
学校のどこよりもあったかいひみつの本部を。

そして明日もきっと、
ひなたぼっこ同盟の会議は、ぽかぽかの光の中でひらかれる。