ある晩、玲奈は奇妙な夢を見た。
夢の中で彼女は果てしなく続く図書館にいた。
棚には無限とも思えるほどの本が並んでおり、そのどれもが見たことのないタイトルだった。
「あなたの人生の分岐点に関する本です。」
突如として現れた白髪の老人が、優しく微笑みながら言った。
「分岐点……?」
玲奈が問い返すと、老人はゆっくりと頷いた。
「あなたの選択ごとに異なる人生が記された本がここにあります。どの選択がどんな未来を生むのか、すべて書かれているのです。」
興味を惹かれた玲奈は、適当に一冊を手に取った。
それは『もしあの日、別の道を選んでいたら』というタイトルだった。
ページをめくると、そこには自分ではない「自分」が経験しているはずの人生が詳細に記されていた。
驚きと好奇心で心が揺れる中、玲奈は次々と別の本を手に取った。
しかし、ある本のページを開いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
気が付くと、玲奈は見知らぬ部屋にいた。
窓の外を見ると、そこはまったく違う街並みが広がっている。
目の前の鏡に映る自分の姿も、少しだけ違って見えた。
「これは……どの本の世界?」
部屋の中を見回すと、机の上に一冊の本が置かれていた。
その表紙には『あなたがこの世界を選んだ理由』と書かれている。
玲奈は震える手でそれを開いた。
そこには、自分が選んだ決断と、それにより変化した未来が記されていた。
現実世界での自分は、ある選択をしなかったことで別の道を歩んでいた。
しかし、この世界の玲奈は、その選択をしたことで違う人生を生きている。
玲奈は戸惑いながらも、この世界での自分を探る旅に出ることを決意する。
街を歩きながら、彼女は何か手がかりを見つけようとした。
その途中、彼女のことを知っているらしい人々と出会った。
しかし、彼らは彼女の知る友人や家族とは少しずつ違っていた。
「玲奈、久しぶりね。」
声をかけてきたのは、現実の世界では疎遠になっていた親友だった。
しかし、この世界では親密な関係が続いているらしい。
玲奈は混乱しながらも、少しずつこの世界の自分の人生を理解していった。
やがて、彼女は元の世界へ戻る方法を探し始める。
図書館へ戻る鍵はどこにあるのか?
その手がかりは『あなたがこの世界を選んだ理由』の最後のページに記されていた。
「元の世界へ戻るためには、ここでの人生の選択を理解し、受け入れること。」
玲奈はこの世界での自分の選択をじっくりと考え、受け入れる覚悟を決めた。
そして、彼女が最後のページを閉じた瞬間、再び意識が遠のいていった。
目を覚ますと、玲奈は元の世界の自分の部屋にいた。
窓の外は変わらぬ景色が広がっている。
しかし、彼女の心には確かな変化があった。
人生の選択肢がもたらす影響を深く理解し、これからの自分の生き方を見つめ直そうと決意したのだった。