影の中の住人

面白い

静かな深夜、少年アキトは町外れの古い図書館に忍び込んでいた。
そこは幼い頃から彼にとって恐怖の場所だった。
数年前、最愛の姉がこの図書館で姿を消したのだ。
それ以来、アキトは「誰かを守れなかった」という罪悪感を抱え、心に深い影を宿していた。

ある日、図書館の地下で彼は「シャドウ」と呼ばれる異形の存在に出会う。
シャドウは人間の影に寄生し、記憶や感情を操る力を持つ。彼らは暗闇からアキトに語りかける。
「お前も影を抱えている。我々と同じだ」と。
その言葉に動揺しながらも、アキトはその場を逃げ出した。

そんな中、親友のリナが突然変わり始める。
明るく元気だった彼女の瞳は、不気味な闇を宿し、口数も少なくなっていた。
「リナもシャドウに取り憑かれたのかもしれない」。
そう確信したアキトは、彼女を救うため再び図書館へ向かう。

図書館に隠された古文書を読み解いたアキトは、「影の結界」という儀式でシャドウを封じられることを知る。
しかし調査を進める中で、シャドウたちがただの怪物ではないことを知る。
彼らは、かつて禁忌の実験を行い失敗した科学者たちのなれの果てだった。
人間であることを失い、影の中に囚われた彼らの願いは「光の下に戻ること」。
だが、それを叶えるためには、新たな人間が影に囚われる必要があるのだ。

リナを助けるためには、アキト自身がその犠牲になるしかない。
彼は恐れと迷いに囚われる。
姉を守れなかった自分が、また大切な人を救えないのではないか――そのトラウマが胸を締めつける。
だがリナの言葉がふと脳裏に蘇る。「アキトはいつも誰かのために頑張れる人だよ」。
その一言に背中を押され、アキトは決断した。

儀式が完成する瞬間、リナの影からシャドウは消え、彼女は元の明るい自分を取り戻した。
しかしアキトの姿は影の中へと消えてしまう。
孤独と闇に閉ざされた世界で、アキトは再びシャドウたちの囁きを聞く。
「お前はまだ自分の影を抱え込んでいる。
その影に向き合えれば、ここから抜け出せるかもしれない」と。

町が平穏を取り戻す中、リナはアキトを取り戻す決意を固める。
アキト自身も、自らのトラウマと向き合い、光の下に帰る方法を模索し始めていた。