不思議

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はにわのまにまに

雨の降る春の日、駅から少し離れた団地の一室に、ひとりの若い女性が引っ越してきた。彼女の名前は中谷 麦(なかたに むぎ)。年は二十七。職業は図書館司書。趣味は――はにわ収集。「なんでそんなに好きなの?」とよく聞かれる。答えはいつも同じだ。「な...
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星屑パン屋と流れ星の願い

とある小さな町に、「星屑パン屋」と呼ばれるパン屋があった。町外れの丘の上にぽつんと建っているその店は、夜になると不思議なことが起こる。パンが星のかけらのように光りだし、風に乗ってふわりと浮かぶこともあるという。そんな噂が子どもたちの間で囁か...
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三尾の狐と運命の灯

深い山奥に、人の姿を取ることができる三尾の狐・白蓮(びゃくれん)が住んでいた。彼女はもともと普通の狐であったが、百年の時を生き、霊力を得て三本の尾を持つ妖狐となった。しかし、まだ九尾の狐のように完全な妖力を持つには至っておらず、人間に化けら...
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アボカドの呼び声

緑色の皮を指先で撫でると、ひんやりとした感触が心地よい。山野ほのかは、毎日のようにスーパーでアボカドを手に取る。肩まである黒髪をひとつにまとめ、エコバッグを片手に歩く姿は、周囲から見ればごく普通の会社員。けれど、彼女には誰にも話していない秘...
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小麦畑の風に抱かれて

広大な小麦畑が広がるその村には、毎年黄金色の波が風に揺れる季節が訪れる。風が吹くたび、小麦の穂がさらさらと音を立て、まるで何かを語りかけるようだった。村のはずれにぽつんと建つ古びた家には、ひとりの少女が暮らしていた。名前はミナ。十二歳の春を...
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影の森と不思議な棒

昔々、ある静かな村にユウトという少年が住んでいました。ユウトは冒険心にあふれる少年で、森や川を探検することが大好きでした。しかし、その村には「決して近づいてはならない森」がありました。そこは「影の森」と呼ばれ、不思議な力が宿っていると恐れら...
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幻虫の楽園

夏の日差しがじりじりと照りつける中、少年・颯太は網を片手に森の奥へと足を踏み入れた。彼の目は獲物を探すハンターのそれだった。颯太は虫が大好きだった。小さい頃から昆虫図鑑を読み漁り、虫取り網を振るうのが何よりの楽しみだった。近所の公園や空き地...
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絵日記の少女と不思議な旅

小さな町の端にある、白い壁の小さな家に、ひとりの少女が住んでいた。名前は 柚葉(ゆずは)。柚葉は毎日、日が沈むころに自分の机に向かい、ノートを開いては色鉛筆を手に取る。彼女の宝物、それは 絵日記 だった。絵日記には、その日に見たもの、感じた...
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月影に囚われし者

満月が夜空に浮かぶとき、この町では決して森へ足を踏み入れてはならない――それが古くからの言い伝えだった。しかし、エリオは幼い頃からこの言葉に疑問を抱いていた。理由も知らされず、ただ「禁じられている」とだけ教えられることが、彼の探究心を刺激し...
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選択の書架

ある晩、玲奈は奇妙な夢を見た。夢の中で彼女は果てしなく続く図書館にいた。棚には無限とも思えるほどの本が並んでおり、そのどれもが見たことのないタイトルだった。「あなたの人生の分岐点に関する本です。」突如として現れた白髪の老人が、優しく微笑みな...