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かきのたね日和

健太は昔から「かきのたね」が好きだった。オレンジ色の小さな柿の種と、塩気の効いたピーナッツ。そのシンプルな組み合わせに、彼はなぜか無性に惹かれてきた。子供の頃、父が晩酌の横に置いていたのをつまみ食いして以来、気がつけば自分の部屋の机の引き出...
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豚肉好きの物語

浩一は、自他ともに認める「豚肉好き」だった。牛肉よりも、鶏肉よりも、魚よりも、とにかく豚肉を愛していた。トンカツのサクサク感とジューシーな甘み、角煮のとろけるような食感、しょうが焼きの香ばしい匂い……どんな料理に姿を変えても、豚肉は彼の心を...
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モロヘイヤの緑に包まれて

夏の朝、畑に立つと、独特の青々とした香りが風に乗って鼻をくすぐった。真っ直ぐ伸びた茎に、小さく艶やかな葉をたたえたモロヘイヤが、陽を受けて光っている。「今年もよく育ったなぁ」そうつぶやいたのは、定年後に農業を始めた和夫だった。元々は会社勤め...
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アーモンドの記憶

健一がアーモンドという食べ物に心を奪われたのは、小学生の頃に祖母の家で食べた一粒がきっかけだった。その日、夏休みの宿題を広げたちゃぶ台の上に、祖母が小さなガラス瓶を置いた。中には飴玉のように見える丸い茶色の実がぎっしり詰まっている。「これは...
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思い出のハヤシライス

「あの味、もう一度食べたいな」ふと、そんな言葉が口をついて出たのは、引っ越しの段ボールを整理しているときだった。大学を卒業して、東京の会社に就職が決まり、ひとり暮らしを始めたばかりの春。段ボールの中には、懐かしい写真や、学生時代のノート、そ...
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ジャーマンポテトの記憶

洋介は、子どもの頃からジャーマンポテトが大好きだった。母が作るジャーマンポテトは、薄切りのじゃがいもをこんがり炒め、ベーコンと玉ねぎを合わせただけの素朴なものだったが、香ばしさと塩気が絶妙で、食卓に並ぶと真っ先に箸を伸ばした。誕生日に「何が...
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担々麺に導かれて

昼休みのチャイムが鳴ると同時に、佐藤悠斗はデスクに書類を置き、誰よりも早く会社を飛び出した。行き先は決まっている。オフィスから歩いて七分ほどの小さな中華料理店「紅龍園」だ。同僚からは「毎日よく飽きないね」とからかわれるが、悠斗は笑って答える...
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ザクザクの記憶

放課後の帰り道、健太は駅前の小さなスーパーに寄るのが日課だった。目的はひとつ、クランキーチョコを一枚買うこと。財布の中にある小銭を確かめながら、彼はお菓子売り場へ直行する。並んだ板チョコの中でも、赤いパッケージのそれを見ると胸が少し躍るのだ...
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メンマ日和

健太は、子どものころから少し変わった好みを持っていた。ラーメン屋に家族で行けば、他の子どもたちはチャーシューや煮卵を奪い合うのに、彼は丼の隅に控えめにのせられたメンマをひたすら噛みしめていた。コリコリとした食感と、ほんのり香る発酵の風味。そ...
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ブルーベリージャムの朝

朝の光が差し込むキッチンの窓辺には、小さな瓶がいくつも並んでいた。ラベルには「夏の思い出」「森の香り」「おばあちゃんの味」と手書きされている。すべて、ブルーベリージャムの瓶だ。美香はその中からひとつを選び、トーストに塗った。甘酸っぱい香りが...