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条件だらけの神様と、一つだけの願い

街外れの古い神社は、地図にも名前が載っていない。鳥居は傾き、絵馬は色あせ、風鈴の音だけが澄んで響いていた。中学生の春斗は、その神社に偶然迷いこんだ。誰もいないはずの拝殿の前で、ぽん、と指を鳴らす音がした。「やっと来たなあ。――待ちくたびれた...
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終わりに流れた歌

古いオルゴールは、棚の隅で静かに眠っていた。木の箱には小さな傷が無数に刻まれ、金色だった飾りはくすんでいる。蓋を開けば、まだバラの模様が faint に光るけれど、ぜんまいは重く、音はところどころで途切れる。誰かに触れられることもなく、季節...
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失敗天使リオのアルバイト修行

雲の上の天界には、ひときわ羽がぼさぼさの小さな天使がいた。名前はリオ。仕事は人間に小さな幸運を届けること――なのだが、これがまったくうまくいかない。プレゼントの箱を風に飛ばして川へ落としたり、導くはずの道しるべを逆向きに立てて迷子を量産した...
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やる気は半分こ

町はずれの丘の上に、煙突だけ元気な小さな家があった。そこに住むのが“やる気のない魔法使い”として有名なレオンである。寝癖のついた髪に、着古したマント。ため息と一緒に魔法を使うのが、彼の日常だった。ある朝、玄関の扉が勢いよく叩かれた。「弟子に...
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夢の修理屋

夜と朝のあいだにある細い路地を、だれも知らないときだけ開く扉がある。古い歯車の看板には、消えかけた金色の文字でこう書かれていた――「夢の修理屋」。気づけば、春斗はその前に立っていた。眠っていたはずなのに、足元には石畳のひんやりとした感触があ...
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卒業式だけの言葉

教室の隅に座る彼は、いつも静かだった。名前は佐伯。出席番号の点呼に小さく手を挙げる以外、誰かと話しているところをほとんど見たことがない。授業中は黒板を真っすぐ見つめ、休み時間は窓の外を眺めている。その横顔に話しかけてみようと何度も思ったが、...
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さよなら、鏡の中の私

部屋の隅に立てかけられた、縁の古い姿見。その鏡の中には、いつも“もう一人の私”がいる。朝、寝癖を直そうと鏡の前に立つと、鏡の中の私は、私より少しだけ早く微笑んだ。「おはよう」声にはならない声が、唇だけで伝わってくる。私は思わず小さく会釈した...
不思議

おかえり、ポコ

商店街のはずれに、小さな古道具屋があった。色あせた看板と曇ったガラス。店先には、誰かの時間を静かに抱えたものたちが並んでいる。その棚の奥に、一匹のくまのぬいぐるみが座っていた。名前は“ポコ”。胸のボタンは一つなく、右耳には小さなほつれ。けれ...
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ひだまりベーカリーの冬灯り

冬の商店街は、白い息といっしょに静けさを吐き出していた。かつては夕方になれば買い物客でにぎわった通りも、今はシャッターが半分ほど降りたまま。冷たい風が古い旗を揺らし、からからと頼りない音を立てている。その真ん中で、小さなパン屋「ひだまりベー...
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冬に寄り添うポインセチア

冬の風が街角を通り抜け、白い吐息が空に溶けていく頃、小さな花屋の店先に真っ赤な葉をひろげたポインセチアが並び始める。店の奥でその鉢をそっと拭いていたのは、花屋の娘の美咲だった。美咲の花屋は、祖母の代から続く古い店だ。派手さはないけれど、店の...