色彩に生きる

面白い

陽葵(ひまり)は、幼い頃から絵の具が大好きだった。
小さな手でチューブをぎゅっと握りしめ、キャンバスの上に色を広げるたび、胸が高鳴った。
赤は燃える炎、青は深い海、黄色は陽だまり。
絵の具が混ざり合う瞬間に、彼女の世界は輝きを増した。

高校生になった陽葵は、美術部に所属し、毎日放課後はアトリエにこもった。
彼女の指先はいつも絵の具で染まり、制服の袖にはカラフルな色が飛び散っていた。
周りの人からは「もう少し綺麗にしたら?」と笑われることもあったが、陽葵にとって絵の具は単なる道具ではなく、自分を表現する大切な存在だった。

ある日、美術部の顧問である椎名先生が、コンテストへの出品を勧めてきた。
「陽葵の絵には、色が生きている。君の色彩感覚をもっと多くの人に見てもらうべきだよ。」

陽葵は胸が高鳴った。
初めての大きな挑戦だ。
しかし、同時に不安もあった。
自分の絵が評価されるのは嬉しい反面、否定されるのが怖かった。

テーマは「私の世界」。

陽葵は悩んだ。
何を描けばいいのか。
風景?人物?それとも抽象画?考えれば考えるほど、筆が進まない。
そんな時、ふと机の上に目をやると、使い古した絵の具のチューブが転がっていた。
赤、青、黄色、緑……どれも蓋に絵の具がこびりつき、潰れかけている。
でも、それはまさに彼女の歴史そのものだった。

「そうだ、私の世界はこれだ。」

陽葵はキャンバスに向かい、迷いなく筆を走らせた。
絵の具を直接指で伸ばし、時にはチューブからそのまま塗りつけた。
彼女の感情がそのまま色となり、キャンバスに広がっていく。
赤は情熱、青は静寂、黄色は希望——彼女のすべてがそこにあった。

そして迎えたコンテスト当日。
会場にはたくさんの作品が並んでいた。
緻密な風景画や、リアルな人物画、どれも素晴らしく、陽葵は少し気後れしそうになった。
それでも、自分の作品の前に立ち、深呼吸する。
「これは、私が愛する世界そのものなんだ。」

審査結果が発表され、彼女の作品は優秀賞を受賞した。
「独創的で、色が生きている」と講評された。
陽葵は驚きとともに、胸が熱くなった。

「やっぱり、私は絵の具が好きだ。」

その日、陽葵は確信した。
これからも色とともに生きていくのだと。
そして、どんな時も自分の色を信じて描き続けようと決めたのだった。