「ようこそ、『ドッグパラダイス』へ!」
店の扉を開けると、ふわりと石鹸の香りが漂い、シンクの中では小さなチワワが気持ちよさそうに目を細めていた。
店主の橘(たちばな)優人は手際よく泡を流しながら、客の女性に微笑んだ。
「モモちゃん、今日は乾燥しやすい季節なので、保湿効果の高いシャンプーを使っていますよ。」
「さすが優人さん!モモ、ここが大好きみたい!」
橘優人は、街で評判のトリマーであり、「ワンちゃんシャンプーのプロ」として知られていた。
彼の手にかかれば、どんなワンコもツヤツヤのふわふわ。
愛情たっぷりのケアが口コミで広がり、週末には予約が取れないほどの人気店になっていた。
ある日、一匹の大型犬が店にやってきた。
ゴールデンレトリバーのコタロウは、長い毛がもつれてひどく汚れている。
連れてきたのは、年配の男性だった。
「この子、最近まで保護施設にいてね。うちに引き取ったんだけど、シャンプーするのが大変で……。」
優人はコタロウの目を見つめ、そっと頭を撫でた。
少し警戒しているが、穏やかさも感じる。
「大丈夫です。コタロウくんが安心できるように、ゆっくりやりますね。」
お湯の温度を調整し、優人は細心の注意を払いながらコタロウを洗い始めた。
最初は落ち着かなかったコタロウも、彼の優しい声と確かな手つきに次第に身を預けるようになった。
もつれた毛を丁寧にほどき、ふわふわの泡で包み込む。
「よし、もう少しだよ。」
やがて、黄金色の美しい毛並みが顔を出した。
シャンプーが終わる頃には、コタロウはすっかりリラックスし、尻尾を振っていた。
「すごい……!こんなに綺麗に!」
男性は感動したようにコタロウを抱きしめた。
「シャンプーって、ただ汚れを落とすだけじゃなくて、安心を届けることでもあるんです。」
優人はそう言って微笑んだ。
それからというもの、コタロウはすっかり『ドッグパラダイス』の常連になった。
新しい家族とともに幸せそうな姿を見せるたびに、優人はこの仕事の素晴らしさを再確認するのだった。