ある日、エジプトの砂漠に住む若い考古学者、アミールは、長い間忘れ去られた古代の王の墓を発見したという情報を得た。
彼は歴史と謎に強い興味を持っており、この機会を逃すわけにはいかないと、すぐに調査チームを結成して墓の調査を始めた。
墓は砂に埋もれ、外からはほとんど見えない状態だったが、彼らは慎重に掘り進め、ついに巨大な石の扉を見つけた。
扉には古代エジプトのヒエログリフが刻まれており、「不滅の王、セネフの霊廟」と書かれていた。
セネフという王の名前は歴史書にはほとんど残されておらず、彼の存在自体が伝説と化していた。
チームは扉を慎重に開け、中へと進んだ。
中は驚くほど保存状態が良く、壁には色鮮やかな壁画や、金や宝石で装飾された棺が鎮座していた。
しかし、アミールの目を引いたのは棺の横に置かれた古びた巻物だった。
それは、セネフ王の生涯と、彼が死後も永遠にこの世界を支配しようとした計画について詳しく書かれていた。
巻物によれば、セネフ王は死後の世界を恐れ、肉体をミイラとして保存するだけでなく、魂を永遠に現世にとどめるための禁じられた儀式を行ったという。
その儀式により、彼の肉体は不滅となり、永遠の眠りにつく代わりに、魂と肉体がこの世にとどまり続ける。
しかし、代償として、彼の怒りを呼び起こす者は誰であれ、その魂を支配する力を持つようになるという恐ろしい呪いがかけられていた。
アミールはその呪いを半信半疑で読み進めたが、彼の同僚たちは不安を感じ始めていた。
「ここにいるのは危険だ」と警告する者もいたが、アミールはその警告を聞き入れず、棺を開ける準備を進めた。
そして、ついに彼らは棺を開け、セネフ王のミイラを目の当たりにした。
その瞬間、奇妙なことが起こった。ミイラの目が微かに光り、空気が異様に重くなったのだ。
突然、墓の中に冷たい風が吹き込み、壁に描かれていた王の姿が動き出したように見えた。
チームの一人が「何かがいる!」と叫んだ瞬間、全員が激しい恐怖に包まれ、外へ逃げ出そうとした。
しかし、出口はなぜか見えなくなり、墓の中に閉じ込められてしまった。
アミールは冷静さを保とうとし、巻物をもう一度確認した。
その中には、王を再び眠りにつかせる方法が書かれていたが、それは非常に危険な儀式だった。
儀式を行う者は自らの命を捧げなければならないという。
アミールは葛藤したが、仲間たちを救うためにはこの方法しかないと決意した。
彼はミイラの前に立ち、儀式を始めた。
巻物に記された古代の呪文を唱え始めると、墓全体が揺れ始め、ミイラはゆっくりと動き出した。
アミールは恐怖に駆られながらも呪文を続け、ついに最後の一言を口にした。
その瞬間、墓の中に光が差し込み、ミイラは再び静かになった。
仲間たちは無事に墓から脱出することができたが、アミールの姿はどこにもなかった。
彼はセネフ王を永遠に鎮めるため、自らの魂を捧げたのだろう。
そして、墓は再び静寂に包まれ、砂漠の風がその上を通り過ぎた。
時が経ち、アミールの冒険は伝説となり、彼の名はセネフ王の呪いと共に語り継がれていくこととなった。
墓は再び忘れ去られ、誰もその場所に足を踏み入れることはなかったが、一つだけ確かなことがあった。
セネフ王のミイラは、再び誰かがその封印を破る日を待ち続けているということだ。