ホラー

知らない友達

駅前の写真屋で現像をお願いしたのは、休日の小さな楽しみのようなものだった。スマホで見るより、紙に焼いた写真の方が、記憶に触れる気がする――そう思っていた。封筒から写真を抜き出した瞬間、指が止まった。どの写真にも、見覚えのないひとりの少女が写...
不思議

おかえり、ポコ

商店街のはずれに、小さな古道具屋があった。色あせた看板と曇ったガラス。店先には、誰かの時間を静かに抱えたものたちが並んでいる。その棚の奥に、一匹のくまのぬいぐるみが座っていた。名前は“ポコ”。胸のボタンは一つなく、右耳には小さなほつれ。けれ...
不思議

夜になると動き出す図書館の本たち

町のはずれに、古い石造りの図書館がある。昼間は子どもたちの笑い声やページをめくる音でにぎわい、夜になると静かな闇に包まれる。その扉が閉ざされるときこそ、図書館の「もうひとつの時間」が始まるのだ。夜の十二時の鐘が遠くで鳴る。すると最奥の本棚の...
食べ物

赤いきゅうりの約束

小さな商店街のはずれにある八百屋の前を通るたび、涼子の足は自然と止まった。山のように積まれたきゅうりの緑が、夏の記憶をそっと呼び起こすからだ。彼女はオイキムチが好きだった。ただ「好き」という言葉では足りないくらい、胸の奥が少しあたたかくなる...
面白い

ひだまりベーカリーの冬灯り

冬の商店街は、白い息といっしょに静けさを吐き出していた。かつては夕方になれば買い物客でにぎわった通りも、今はシャッターが半分ほど降りたまま。冷たい風が古い旗を揺らし、からからと頼りない音を立てている。その真ん中で、小さなパン屋「ひだまりベー...
動物

たぬきたちの年越し支度

冬の山里に、ふっくらした毛並みのたぬきたちが暮らしていました。雪がしんしんと降り積もり、白い息が空に溶けていく頃――それは、年越しの準備が始まる合図でした。族の中で一番働き者のポン太は、朝いちばんに古い切り株の上でみんなを集めました。「さあ...
面白い

冬に寄り添うポインセチア

冬の風が街角を通り抜け、白い吐息が空に溶けていく頃、小さな花屋の店先に真っ赤な葉をひろげたポインセチアが並び始める。店の奥でその鉢をそっと拭いていたのは、花屋の娘の美咲だった。美咲の花屋は、祖母の代から続く古い店だ。派手さはないけれど、店の...
面白い

時計屋のクリスマス

静かな雪の夜、町の灯りが粉砂糖のように白い屋根を照らしていた。商店街の端に、小さな古い時計屋がある。ドアの上のリースは年季が入り、真ん中の赤いリボンだけが少し誇らしげに揺れていた。店主の老人、榛名さんは今年も一人で店番をしていた。棚には止ま...
面白い

光の海の約束

冬の空気は、指先を軽く刺すように冷たかった。それでも紗菜は、マフラーの中に吐いた白い息を見つめながら、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じていた。駅前の並木道に、一つ、また一つと灯りがともり始めている。まだ完全には暗くなりきらない紺色の空を背...
面白い

わたしの中の小さな魔法

町の外れ、小高い丘の上に立つ古い家。その屋根裏部屋に住む灯里は、小さな頃から魔女に憧れていた。黒い帽子、古い呪文書、夜空を横切る箒。学校の帰り道に見上げる夕焼けを見ては、「あそこを飛べたら」と胸の奥が熱くなるのだった。灯里の部屋には、拾い集...