面白い

失敗天使リオのアルバイト修行

雲の上の天界には、ひときわ羽がぼさぼさの小さな天使がいた。名前はリオ。仕事は人間に小さな幸運を届けること――なのだが、これがまったくうまくいかない。プレゼントの箱を風に飛ばして川へ落としたり、導くはずの道しるべを逆向きに立てて迷子を量産した...
面白い

やる気は半分こ

町はずれの丘の上に、煙突だけ元気な小さな家があった。そこに住むのが“やる気のない魔法使い”として有名なレオンである。寝癖のついた髪に、着古したマント。ため息と一緒に魔法を使うのが、彼の日常だった。ある朝、玄関の扉が勢いよく叩かれた。「弟子に...
不思議

夢の修理屋

夜と朝のあいだにある細い路地を、だれも知らないときだけ開く扉がある。古い歯車の看板には、消えかけた金色の文字でこう書かれていた――「夢の修理屋」。気づけば、春斗はその前に立っていた。眠っていたはずなのに、足元には石畳のひんやりとした感触があ...
不思議

真夜中だけの終着駅

真夜中、町の灯りがすっかり消えた頃、線路の向こうから低い風のような音が近づいてくる。ダイヤには載っていない電車――“真夜中の電車”は、もう誰も使わなくなった駅にだけ止まる、不思議な列車だった。桐生灯里は、その噂を子どもの頃から聞いていた。廃...
動物

心でつながる声なき友だち

冬の朝、白い息を吐きながら登校する道すがら、蓮は一本の川沿いで立ち止まった。霜に縁取られた草むらの中で、小さく丸くなっている黒い影に気づいたからだ。近づくと、それは細い体を震わせている一匹の犬だった。首輪はなく、声を出そうとしても喉の奥で空...
不思議

雨にだけ現れる人たち

放課後、校門を出た瞬間、空が泣き出した。大きな雨粒がアスファルトを叩き、世界の輪郭を少しずつ溶かしていく。傘を忘れたことに気づいた私は、しばらく軒下で雨宿りをするつもりだった。けれど、その時――人の流れの中に、おかしな存在が混じっているのに...
面白い

卒業式だけの言葉

教室の隅に座る彼は、いつも静かだった。名前は佐伯。出席番号の点呼に小さく手を挙げる以外、誰かと話しているところをほとんど見たことがない。授業中は黒板を真っすぐ見つめ、休み時間は窓の外を眺めている。その横顔に話しかけてみようと何度も思ったが、...
動物

春を探すクマ

雪は音を飲み込む。白い森に、しんとした静けさが降り積もっていた。――本当なら、いまごろは夢の底にいるはずだった。クマのトオルは、大きなあくびをひとつして、鼻先を赤くしながら空を見上げた。冬眠のために作ったはずの巣穴は、落ちてきた古い木の枝で...
食べ物

見えないまちの案内猫

夜更けの路地で、白い息を吐きながら私は迷っていた。見慣れたはずの帰り道が、雨ににじんだネオンの中でまるで別の迷路に変わってしまったみたいだった。スマートフォンの地図はぐるぐる回るばかりで、どちらが家なのかもわからない。立ち止まったとき、足元...
面白い

さよなら、鏡の中の私

部屋の隅に立てかけられた、縁の古い姿見。その鏡の中には、いつも“もう一人の私”がいる。朝、寝癖を直そうと鏡の前に立つと、鏡の中の私は、私より少しだけ早く微笑んだ。「おはよう」声にはならない声が、唇だけで伝わってくる。私は思わず小さく会釈した...