動物

動物

月影の森のシロ

森の奥深く、人の気配がほとんど届かない静寂の地に、一頭のツキノワグマが暮らしていた。名前は「シロ」。首元にくっきりと浮かぶ白い三日月模様が、その名の由来だった。シロはまだ若いが、母グマから教えられた知恵と勘で、山の恵みとともに生きていた。春...
冒険

トラの大冒険 ~星降る谷を越えて~

そのトラの名は、ラオといった。金色のたてがみに、琥珀色の瞳。ジャングルの王と讃えられるにはまだ若かったが、その心には誰よりも熱い冒険への憧れが燃えていた。ラオが生まれ育ったのは、緑深きセリカの森。ここでは多くの動物たちが平和に暮らしていたが...
動物

キリンのキキと空とぶ帽子

アフリカの広いサバンナに、首のとても長いキリンの女の子が住んでいました。名前はキキ。まだ小さな子どもキリンですが、背はもう大人のシマウマよりずっと高く、首を空に向けると、遠くの雲まで見えるほどでした。キキには夢がありました。それは「空を飛ぶ...
動物

砂の海に咲く夢

サンゴ礁の沖合に、ひっそりとした砂地が広がっている。その静かな海底に、チンアナゴの群れが暮らしていた。その中に、小さなチンアナゴの「ナギ」がいた。ナギはまだ若く、他の仲間のようにまっすぐ体を伸ばすことも、遠くを警戒することも苦手だった。強い...
冒険

ちいさな青い影 ~フェアリーペンギンの旅~

南の海に浮かぶ岩場の影に、ちいさな青いペンギンが一羽、隠れるように立っていた。彼の名前はピコ。フェアリーペンギン――世界で一番小さなペンギンだ。生まれてまだ半年。大人になるにはもう少しかかるが、ピコはもう巣を離れ、魚を探して海へ出る訓練を始...
不思議

ニラと光る猫

町外れのアパートに、ニラが大好きな男が住んでいた。名は島田光太(しまだこうた)、三十六歳、独身。スーパーの青果売り場で働く彼は、毎日規則正しく仕事を終え、まっすぐ帰宅すると、冷蔵庫に入っているニラの束を取り出しては、ニラ玉、ニラ炒め、ニラう...
動物

しぶきとソラと秘密の池

ソラは、小さな町に住むゴールデンレトリバーの男の子。光るような金色の毛並みと、くりくりした目がチャームポイント。彼にはひとつ、大きな特徴があった——水が大好きでたまらないのだ。朝、町の川沿いを散歩するたびに、水面に映る自分の顔に向かって吠え...
動物

あの坂の上で

坂の上に、古びた一軒家があった。町から少し離れたその家には、白髪まじりの老人と、一匹の秋田犬が暮らしていた。老人の名は中村誠一(なかむら せいいち)。定年を迎えて十年が過ぎ、今ではこの静かな町で、のんびりとした日々を送っている。秋田犬の名前...
動物

雨とドッグカフェ

木造の小さな家の一階部分を改装したドッグカフェ「いぬもあるけば」は、町外れの静かな通りにあった。店主の佐々木千景(ささき ちかげ)は三十代半ば。落ち着いた雰囲気をまとい、犬たちにはいつも穏やかな声で話しかけていた。カフェには看板犬の柴犬「も...
動物

リスのポンと森のキャンプ場

深い森の奥に、小さなリスが一人で営むキャンプ場がありました。その名も「どんぐりキャンプ場」。リスのポンが切り盛りしているこの場所は、季節ごとに違った顔を見せ、森の仲間たちに大人気でした。ポンは、働き者のリスです。春には草を刈り、夏にはテント...