山奥にある小さな村、白木村。
地図にも載っておらず、訪れる者もほとんどいない。
村に伝わる古い伝承によれば、かつてこの地に住む人々は「かみさま」に生贄を捧げることで豊かな生活を得ていたという。
その儀式が行われなくなった後、村は徐々に廃れ、人々の記憶からも消え去った。
ある夏、都市伝説を調査する雑誌記者の健一とその友人たちは、この白木村を訪れることになった。
目的は、村に関する不気味な噂を確かめることだった。
「村を訪れた者は戻ってこれない」「夜になると村全体が異界に飲み込まれる」など、話は様々だったが、どれも現実味はなさそうだった。
村にたどり着いた彼らは、そこが完全に無人であることに気づく。
木造の家々は荒れ果て、草木が建物を侵食していた。しかし、奇妙なことに村の中心にある祠だけは新しいもののように見えた。
その祠の中には、古ぼけたお面が置かれており、何かを見張るように村全体を見下ろしていた。
健一たちは祠の中を詳しく調べることにしたが、友人の一人が「お面が動いた」と言い出した。
笑い飛ばそうとする彼らだったが、次の瞬間、村全体に不気味な鐘の音が響き渡る。
辺りを見渡すと、いつの間にか霧が立ち込めていた。
さらに、先ほどまで無人だったはずの家々から灯りが漏れ、人影が動くのが見えた。
村の住人が戻ってきたかのようだったが、その動きは不自然で、まるで糸で操られているかのようだった。
健一たちは恐怖に駆られ、村を出ようとしたが、霧がどんどん濃くなり、道が見えなくなってしまう。
やがて、一人、また一人と姿を消していく友人たち。
その声が遠くから響いてくるが、どれも助けを求める叫び声だった。
最後に残った健一は祠に戻り、お面を取り外せば何かが変わるかもしれないと考えた。
祠に戻ると、お面は健一を見つめるように位置を変えていた。
恐る恐るお面を手に取ると、突然、村全体が異様な音とともに揺れ始める。
お面を地面に叩きつけた瞬間、健一は気を失った。
気がつくと、そこは見知らぬ病院のベッドだった。
どうやら地元の警察が山中で倒れている彼を発見し、病院に運んだらしい。
しかし、友人たちの姿はどこにもなく、彼らの痕跡も見つからなかった。
その後、健一は仕事を辞め、表舞台から姿を消した。
そしてある日、彼の部屋で奇妙なものが見つかった。
それは、あの村の祠にあったお面だったという。