青々と茂る木々に囲まれた静かな湖、その畔には小さな村がありました。
その村には、三毛猫のミコが住んでいました。
ミコは村で一番美しい猫と評判で、その白い毛皮に茶色と黒の斑がまるで絵画のように散りばめられていました。
ミコは元々、村にある小さな図書館の飼い猫でした。
図書館の館長であるおばあさんが、ある寒い冬の日に湖の近くで弱ったミコを見つけ、家に連れて帰ったのです。
それ以来、ミコは図書館のシンボルとなり、村の人々から愛されていました。
湖の畔で暮らすミコは、毎朝湖の水面が太陽の光でキラキラと輝くのを眺めるのが日課でした。
その美しい光景を見るために、彼女は早起きして図書館から湖へ向かうのが習慣となっていました。
湖畔には、彼女のお気に入りの場所である大きな石があり、その上でミコはよくくつろいでいました。
ある日、村に一人の青年がやってきました。
彼の名前は翔太といい、都会での忙しい生活に疲れ、心の癒しを求めてこの村を訪れたのでした。
翔太は、村の図書館で本を借りるために訪れ、そこでミコと初めて出会いました。
ミコは初めて見る翔太に興味津々で、彼の足元に近づき、ふんわりとした尻尾を彼の足に巻きつけました。
翔太は驚きつつも、その可愛らしい三毛猫にすぐに心を奪われました。
彼は図書館の館長に話しかけ、ミコのことや湖の畔での暮らしについて聞きました。
翔太はミコが毎朝湖へ行くことを知り、自分も彼女と一緒にその美しい光景を見たいと思いました。
次の日の朝早く、翔太は図書館の前でミコを待っていました。
ミコは翔太の姿を見て一瞬驚きましたが、すぐに彼のそばに来て、彼と一緒に湖へ向かいました。
湖畔に着くと、朝日が湖の水面に反射して美しい光のカーテンが広がっていました。
翔太はその光景に感動し、ミコがこの場所を特別に思う理由がすぐにわかりました。ミコはお気に入りの大きな石の上に登り、翔太もその隣に腰を下ろしました。二人は静かにその美しい朝のひとときを楽しみました。
それから、翔太は毎朝ミコと一緒に湖へ行くようになりました。
彼は村の人々とも親しくなり、図書館の館長とも深い話をするようになりました。
彼女は翔太に、ミコがどれほど村の人々に愛されているかを語りました。
ミコはただの猫ではなく、村の癒しと希望の象徴だったのです。
数ヶ月が過ぎ、翔太は都会に戻る決意をしました。
しかし、彼はこの村とミコに深い愛着を感じていました。
彼は図書館の館長に別れを告げ、最後の朝をミコと過ごすために湖へ向かいました。
その朝、翔太は特別な贈り物を持っていました。
彼は湖の畔にミコのための小さな木のベンチを作り、それをミコの大好きな大きな石の隣に置きました。
ミコがいつでもくつろげるように、翔太の愛と感謝の印として作られたベンチでした。
翔太はミコに別れを告げ、都会に戻りました。
しかし、彼は毎朝のように湖の畔を思い出し、ミコと過ごした時間を大切に心に刻みました。
そして、村の人々もまた、ミコと翔太の絆を語り継ぎ、そのベンチは村の新たなシンボルとなりました。
湖の畔でミコは今も毎朝、翔太が作ってくれたベンチに座りながら、太陽の光が湖面を輝かせるのを見ています。
彼女はその光景とともに、翔太との特別な思い出を大切にしながら、静かに暮らしているのです。
