静かに残る灯り

面白い

町の外れに、取り壊しを待つ古い発電所があった。
送電線はすでに切られ、建物は夜になると真っ暗になるはずだったが、なぜか一つだけ、奥の制御室に小さな灯りが残っていた。

誰もその理由を知らない。
子どもたちは「幽霊のランプ」と呼び、大人たちは見ないふりをした。
灯りは強くもなく、呼びかけるように瞬くこともない。
ただ、夜が深くなるほど、そこに在ることだけを主張するように、静かに点っていた。

私は仕事帰り、遠回りをしてその発電所の前を通るのが習慣になっていた。
理由はない。強いて言えば、灯りが消えてしまう日が来ると知っていたからだ。
取り壊しの日程は掲示板に貼られていた。
数字の並びは冷たく、余白が多かった。

ある夜、雨が降り始め、私は初めて建物の中に入った。
錆びた扉は重く、開く音が夜に溶けた。
制御室には古い計器盤があり、その中央に、豆電球ほどの灯りがあった。
コードはどこにも繋がっていない。
それでも灯りは消えなかった。

近づくと、灯りの中に微かな温度があった。
触れると壊れてしまいそうで、私は手を引っ込めた。
代わりに、そこに腰を下ろした。
雨音が屋根を叩き、遠くで電車が通る。
灯りはそれらを受け止めるように、ただ点っていた。

不意に、ここで働いていた人たちの姿を想像した。
夜勤の誰かがコーヒーを啜り、計器を見守り、眠気と戦っていたこと。
誰かの帰りを待ちながら、灯りの下で小さな約束を交わしたこと。
灯りは、そうした時間の端っこを、最後まで離さなかったのかもしれない。

取り壊しの前夜、私はまたそこに行った。
灯りは変わらず、静かだった。
言葉は必要なかった。
私は小さく頭を下げ、扉を閉めた。

翌朝、建物はなくなり、空が広がっていた。
夜になると、そこは真っ暗だった。
それでも、しばらくの間、私はその場所を通るたび、胸の奥に小さな灯りが残っているのを感じた。
消えずに、主張もせず、ただ静かに。
それで十分だと、思えた。