深い森の奥に、小さなリスが一人で営むキャンプ場がありました。
その名も「どんぐりキャンプ場」。
リスのポンが切り盛りしているこの場所は、季節ごとに違った顔を見せ、森の仲間たちに大人気でした。
ポンは、働き者のリスです。
春には草を刈り、夏にはテントを張り直し、秋にはどんぐりスープをふるまい、冬には毛布を編みます。
キャンプ場の入り口には、小さな木の看板がありました。
「自然とともに、心やすらぐ場所。どんぐりキャンプ場へようこそ」
ある春の日、キャンプ場に新しいお客さんがやってきました。
フクロウのフー、タヌキのトト、そしてちょっと気の弱いウサギのミミです。
「こんにちは~、ここが噂のキャンプ場ですか?」
「いらっしゃい!今日は晴れてるから、テント日和だよ」ポンはしっぽをふわっと揺らしながら笑顔で迎えました。
フーは森の学校の先生で、休日には星を眺めるのが好き。
トトは食いしん坊で、どんぐりスープの評判を聞きつけてやってきました。
ミミは初めてのキャンプにドキドキして、しっぽがピンと立っています。
「まずはテントを張りましょう!」ポンは元気に声をかけ、みんなで協力してテントを建てました。
ポンの作った木のペグは小さな動物でも扱いやすく、トトは「こんなの初めて!」と感心していました。
夕方になると、ポンは焚き火の準備を始めました。
落ち葉と小枝を集め、カチッと火打石で火を起こします。
火がパチパチと音を立てると、ミミが「すごいねぇ…」と目を輝かせました。
「さぁ、スープの時間だよ!」
大きなどんぐりの器に注がれたスープは、ポン特製のレシピ。
森で採れたクルミ、キノコ、ベリー、そしてちょっぴりのハチミツが入っています。
みんなで「いただきます」と手を合わせてスプーンを口に運ぶと、体の芯までぽかぽかに温まりました。
夜になると、フーが望遠鏡を組み立ててくれました。
森の空はとても澄んでいて、星がびっしりと浮かんでいます。
「見てごらん、あれが春の大三角だよ」
ポンは空を見上げながら、満足そうにうなずきました。
この森の空を見せたくて、このキャンプ場を作ったのです。
ミミは初めてのキャンプに不安だったけれど、仲間と一緒に過ごすことで、だんだんと自信がついてきました。
「明日はハンモックで昼寝したいな」と、小さな声でつぶやいたミミに、ポンはにっこり。
「もちろん。風にゆられて、気持ちいいよ」
翌朝、朝露にぬれた葉っぱを踏みしめながら、ポンはまた今日の準備を始めます。
訪れる仲間たちが笑顔になれるように、今日もどんぐりキャンプ場はにぎやかです。
森の奥、誰にも知られていない場所に、小さなリスが作った大きな幸せがある。
そんな場所があっても、いいと思いませんか?