静かな湾に浮かぶ小さな島、その周りの海はラッコたちの楽園だった。
海藻がゆらめき、貝が豊富に獲れるこの場所には、一匹のラッコが暮らしていた。
彼の名はリク。
生まれたときからこの海にいて、貝を割るのが得意で仲間たちからも頼りにされていた。
ある晩、リクはいつものように岩の上で貝を割っていた。
しかし、その日は少し違っていた。
海の向こうの空が、見たこともないほど明るく輝いていたのだ。
空一面に流れ星が降り注ぎ、まるで夜空が光のシャワーを降らせているようだった。
「すごい……!」
リクは見とれながら、ふと思い出した。
昔、母ラッコが言っていた言葉を。
「流れ星に願いをかけると、それはきっと叶うんだよ」
リクは静かに目を閉じて願った。
「どうか、もっと広い世界を知ることができますように」
翌朝、リクはいつものように仲間と狩りをしていた。
すると、沖の方から一艘の船が近づいてくるのが見えた。
珍しいことではなかったが、今回は違った。
船には人間だけでなく、見たことのない動物が乗っていたのだ。
それはアシカだった。
人間とともに何かの研究をしているらしく、海に潜っては何かを調べていた。
「へえ、人間と一緒にいるアシカがいるんだな」
リクは興味を持ち、そっと船の近くまで泳いでいった。
すると、アシカの一匹がリクに気づき、優しく微笑んだ。
「こんにちは、君はこの海に住んでいるラッコ?」
「そうだよ。君たちは何をしているの?」
「私たちは海の環境を調べているんだよ。最近、プラスチックごみが増えていて、それが海の生き物に影響を与えているんだ」
リクは驚いた。
確かに、時々海の中に見慣れないものが漂っていることがあった。
それが危険なものだとは思っていなかった。
「君はこの海を守りたいと思う?」
アシカが尋ねた。
「もちろん!」
リクは力強くうなずいた。
「だったら、僕たちと協力しない?」
こうしてリクはアシカたちと協力し、海の環境を守るための活動を始めた。
仲間のラッコたちにも知らせ、海に漂うゴミを集めたり、人間が近くに来たときに知らせたりするようになった。
やがて、リクの願いは叶った。
彼は広い世界を知り、新しい友達を作り、そして自分の住む海をもっと大切に思うようになったのだった。
そして、また星が降る夜、リクは静かに海を見つめていた。
「今度は何を願おうかな?」
そうつぶやいた彼の瞳には、新しい冒険への期待が輝いていた。