ごぼう愛、スナックに乗せて

食べ物

佐藤一樹は、ごぼうが好きだった。
その魅力は、噛めば噛むほど広がる滋味深い味わいと、独特の香り。
そして、素朴な外見とは裏腹に、どんな料理にも馴染む懐の深さにあった。
彼は幼い頃から、ごぼうの煮物やきんぴらごぼうを好んで食べていたが、大人になってからは、自ら創意工夫を凝らしたごぼう料理を作るようになっていた。

そんな一樹が働いているのは、小さな町の食品加工会社だった。
彼の仕事は、新商品の開発と品質管理。
日々、さまざまな食材と向き合いながらも、彼の心の中心にあるのは、やはりごぼうだった。

ある日、会社の新商品企画会議で、一樹は思い切って提案した。
「ごぼうの魅力を最大限に活かしたスナック菓子を作りたいんです!」
会議室が静まり返る。
上司の村田課長が、眼鏡の奥の目を細めて言った。
「スナック菓子? ごぼうで?」
「はい。ごぼうチップスはすでに市場にありますが、もっと独自性のあるものを作りたいんです。例えば、ごぼうの香ばしさを引き立てるスパイスを組み合わせたスティック状のお菓子とか……」

同僚たちは興味を示したが、課長は腕を組んで渋い顔をした。
「確かに面白いアイデアではあるが、ごぼうは一般的に地味な食材だ。スナックのターゲット層は若年層が多い。受け入れられるだろうか?」
「そこを工夫するんです!」一樹は力を込めて続けた。
「ごぼうの持つ健康効果や食物繊維の豊富さを前面に出して、ヘルシー志向の消費者にアピールできます。それに、スパイスやハーブと組み合わせれば、若い世代にも受け入れられるはずです!」

課長はしばらく考え込んでいたが、やがて深く息をついて言った。
「……よし、一度試作品を作ってみろ。ただし、社内の試食で評判が悪かったらボツだ」

一樹はその日から試作に没頭した。
何種類ものスパイスを試し、ごぼうの切り方や揚げ方を工夫し、何度も試行錯誤を繰り返した。
そして、ついに彼の理想とするごぼうスナックが完成した。

試食会の日、社員たちは一口食べると驚きの声を上げた。
「おいしい! ごぼうの風味がしっかりしてるのに、スパイシーで後を引く!」
「これ、ヘルシーだし罪悪感なく食べられるね」

課長も満足げに頷いた。
「予想以上にいい出来だな……。これは、いけるかもしれんぞ」

こうして、一樹の考案したごぼうスナックは正式に商品化されることになった。
そして、発売後、健康志向の消費者の間で評判となり、予想以上の売れ行きを記録した。

ある日、スーパーで自分の開発したスナックを手に取る若い女性を見かけた。
その女性は、袋を眺めながら小さく微笑み、カゴに入れた。
一樹は心の中でガッツポーズをした。

ごぼうが、こんなにも多くの人に愛される日が来るなんて——。

彼のごぼう愛は、これからも続いていくのだった。