ビタミンC狂想曲

面白い

「これが、私の人生を変える…!」

松井理沙は、震える手で小瓶のラベルを見つめた。
そこには「高濃度ビタミンCセラム」と書かれている。
研究室で開発された最新の美容液で、肌に塗るだけで若返る効果があると話題だった。

理沙は三十代半ばに差し掛かり、最近肌のくすみやシミが気になり始めていた。
仕事は化粧品会社の研究員。
彼女の専門はビタミンCの応用で、長年にわたり効果的な浸透技術の開発に取り組んできた。
しかし、いくら知識があっても、自分の肌の老化を止めることはできない。

そんなある日、彼女は偶然にも社内の機密プロジェクトの存在を知った。
そこでは「究極のビタミンCセラム」が開発されていたのだ。
理沙はすぐに研究データを調べ、その成分が今までにないほどの高濃度であることを確認した。

「これさえあれば…!」

彼女は迷わず、自分の肌で試すことを決意した。

翌朝、理沙は鏡を見て驚いた。
肌が驚くほど明るく、ハリが蘇っている。
こんな短時間で効果が現れるなんて!興奮した彼女は、毎日セラムを塗り続けた。
周囲からも「最近、肌が輝いてるね」と言われるようになり、ますます自信を深めた。

しかし、それから数週間後、理沙は異変を感じ始める。

肌は確かに美しくなったが、なんだか異常に白くなりすぎていた。
血色が失われ、透き通るような青白さを帯びている。
そして、極端に日光を避けたくなった。
どんなに曇りの日でも、外に出るとチクチクと痛みを感じるのだ。

「まるで吸血鬼みたい…」

冗談のつもりで言ったが、心の奥では不安が広がっていた。

理沙はセラムの成分を改めて調べた。
開発チームの報告書によると、この高濃度ビタミンCは通常のものと異なり、体内で特殊な変化を起こす可能性があると記されていた。

「細胞レベルでの代謝変異…?」

彼女は急いで自分の血液を検査した。
そして、驚愕の事実を突き止める。

——彼女の細胞は、もはや通常の人間のものではなかった。

ビタミンCの過剰な作用により、彼女の体は紫外線を極端に拒絶するように変化していたのだ。
まさに、吸血鬼のような体質に。

理沙は迷った。
美しさを維持するために、このままセラムを使い続けるべきか。
それとも、すべてを元に戻すために、使用をやめるべきか。

しかし、彼女にはもう一つの選択肢があった。

「この技術を、人類のために活かす…」

理沙は研究チームに事実を報告し、改良を進めることを決意した。
このビタミンCが持つ可能性は計り知れない。
もし、適切に調整できれば、病気の治療や老化防止に革命をもたらすことができるかもしれない。

彼女は自らの変化を受け入れ、新たな研究に取り組み始めた。

そして、数年後——

理沙の研究は世界的な成功を収め、新たな医療技術として確立された。
彼女自身も特殊な体質のままだったが、それを誇りに思うようになった。

「美しさは、ただの見た目だけじゃない」

彼女は鏡に映る自分を見つめ、静かに微笑んだ。