シバ犬のタロウは、走るのが大好きな犬だった。
家の庭では物足りず、散歩の時間が何よりも待ち遠しかった。
しかし、タロウが最も興奮するのは、週に一度のドッグランの日だった。
「タロウ、行くよ!」
飼い主のサキがリードを持ち上げると、タロウの尻尾は大きく揺れた。
玄関の扉が開くやいなや、彼は弾けるように外へ飛び出した。
ドッグランまでの道のりも楽しいが、本番はそこからだ。
広々としたドッグランに到着すると、タロウはすぐに走り出した。
風を切りながら駆け抜けるその姿はまるで小さな竜巻のようだった。
ドッグランにはさまざまな犬が集まり、みんな思い思いに遊んでいた。
ゴールデン・レトリバーのルークとはいつものように鬼ごっこをし、ダックスフントのミミとは穴掘り競争をした。
「タロウ、本当に走るのが好きね」
サキが笑いながら見守る中、タロウは芝生の上を自由自在に駆け回った。
ある日、いつものようにドッグランへ向かうと、見慣れない犬がいた。
細身のボーダー・コリーで、端の方でじっと座っていた。
「新しい子かな?」
サキがつぶやくと、タロウは興味津々で近づいた。
「こんにちは!ぼくはタロウ!」
ボーダー・コリーは一瞬びくっとしたが、小さな声で「ボクはソラ」と名乗った。
ソラは以前の飼い主と離れ離れになり、新しい家に引き取られたばかりだった。
環境が変わり、不安でいっぱいだったのだ。
「ここ、楽しいよ!一緒に走ろう!」
タロウは勢いよく誘ったが、ソラはためらった。
「ボク、速く走れるか分からない…」
「そんなの関係ないよ!風を追いかけるのが楽しいんだ!」
タロウは軽やかに駆け出し、何度も振り返ってソラを見た。
ソラは戸惑いながらも、ゆっくりと足を動かし始めた。
そして、次第にスピードを上げ、タロウの後を追った。
「うわあ、風が気持ちいい!」
ソラの目が輝いた。その日から、ソラもドッグランを楽しむようになった。
それからというもの、タロウとソラはドッグランの常連となり、一緒に遊ぶのが日課になった。
ソラの走りは日に日に速くなり、ついにはタロウと同じスピードで駆けられるようになった。
「今日はどっちが風を追いかけられるか競争だ!」
タロウの掛け声とともに、二匹は一斉に走り出した。
芝生の上を駆け抜けるたびに、彼らの心は軽くなっていった。
ソラはもう不安そうな顔をしていない。
「風に追いつけるかも!」
そう叫びながら、二匹の犬は楽しそうに走り続けた。
ドッグランは、ただの遊び場ではなかった。
それは、タロウにとっては風を感じる場所であり、ソラにとっては新しい自分を見つける場所だった。
今日もまた、タロウとソラは風を追いかける。
そして、いつまでもその風の中で走り続けるのだった。