都会の真ん中にある「グリーンヒル動物園」には、さまざまな動物たちが暮らしていた。
その中でも特に人気があったのは、堂々たるたてがみを持つライオンの「レオン」と、ちょこまかと動き回るペンギンの「ピート」だった。
レオンは動物園の王者と呼ばれ、広い檻の中で悠々と過ごしていた。
一方のピートは、仲間たちとともにペンギンのプールでいつも元気に泳ぎ回っていた。
そんな二頭に共通点はないように思えたが、実は密かに心を通わせる特別な関係があった。
ある日の夜、突然の嵐が動物園を襲った。
激しい雨と風で檻の鍵が壊れ、レオンの檻の扉が開いてしまった。
自由になったレオンは、静かに歩き始めた。
職員たちは気づいていなかったが、ピートはその様子を遠くから見ていた。
「レオンが外に出たら大変だ!」
ピートは短い足で必死に走り、レオンに追いついた。
「レオン、どこに行くんだ?」
「……気がついたら扉が開いていたんだ。せっかく自由になれたんだし、森に帰ろうと思ってな」
「それはダメだよ!ここには君を待ってるお客さんも、仲間の動物たちもいる。第一、外は危険だよ!」
ピートは必死に説得したが、レオンは「心配するな」と笑って、そのまま外に向かおうとした。
その時、突然「バキバキッ!」という音が響き、近くの木が雷で折れ、動物園のフェンスが壊れてしまった。
「逃げよう!」
レオンはピートを口にくわえ、安全な場所へ駆け出した。
やがて動物園の片隅にある管理小屋までたどり着くと、レオンはピートをそっと地面に下ろした。
「助かった……」
ピートがほっと息をついたその瞬間、レオンは驚いた声を上げた。
「ピート、後ろだ!」
振り返ると、嵐で倒れた木の下敷きになった小さなサルがいた。
「助けなくちゃ!」
レオンは大きな前足で木を持ち上げ、ピートがサルを引っ張り出した。
嵐が収まり、動物園の職員たちが駆けつけると、レオンはおとなしく檻に戻り、ピートもプールへ帰った。
サルは無事に助かり、動物園のヒーローはレオンとピートだと話題になった。
それ以来、動物園ではライオンとペンギンの友情が語り継がれるようになり、レオンの檻のそばには「ピートのプール」が新しく作られた。
レオンはそこに近づいては、時々「ありがとう」と言わんばかりにうなずき、ピートも「任せて」とばかりに羽をパタパタさせていたという。