スープカレーと僕の物語

食べ物

北海道の冬は長い。
寒さが骨の芯まで染み込む季節になると、僕はいつも決まってスープカレーが食べたくなる。

僕の名前は佐々木悠人(ささきゆうと)。
札幌に住む、ごく普通の会社員だ。スープカレーとの出会いは、大学時代に遡る。
当時、札幌の大学に進学した僕は、下宿先の近くにあった小さなスープカレー専門店「カリー灯(とう)」に足を踏み入れた。

店内は木の温もりが感じられ、スパイスの香りが充満していた。
初めて注文したのは、定番の「チキンスープカレー」だった。
スプーンを口に運ぶと、スープの深いコクとピリッとした辛さが口の中に広がり、鶏肉はほろほろと崩れるほど柔らかかった。
「こんなに美味しい食べ物があったのか!」と、衝撃を受けた瞬間だった。

それ以来、僕はスープカレーに魅せられた。
週に一度は「カリー灯」に通い、いろいろなメニューを試した。
スープのベースはトマト、ココナッツ、和風だしと種類があり、その日の気分で選ぶ楽しさがあった。
具材も野菜たっぷりのヘルシーなものから、牛すじ煮込みやシーフードが入った贅沢なものまで多種多様だった。

ある日、「カリー灯」の店主・斉藤さんが「スープカレーを作ってみたら?」と僕に言った。
「作る?」と驚く僕に、斉藤さんは「好きなら、自分の味を見つけるのも楽しいぞ」と笑った。

それが、僕がスープカレーを自分で作るきっかけとなった。

最初は簡単なレシピから始めた。
鶏肉をじっくり煮込み、トマトベースのスープを作り、スパイスを加えていく。
しかし、何かが違う。「カリー灯」の味には到底及ばなかった。

試行錯誤を重ねる中で、僕はスパイスの奥深さに気付いた。
クミン、コリアンダー、ターメリック、カルダモン……それぞれが持つ個性が絶妙に組み合わさることで、スープカレー独特の味わいが生まれる。
何度も失敗を繰り返しながら、少しずつ自分好みの味に近づけていった。

そんなある日、ふと思った。
「自分の店を持ちたい」と。

もちろん、簡単な話ではない。
料理人の経験もないし、資金もなかった。
それでも、スープカレーへの情熱は消えなかった。
仕事を続けながら料理の勉強をし、休日には各地のスープカレー店を巡って研究した。

数年後、僕は会社を辞め、自分のスープカレー店を開いた。
「スパイスの森」という名前をつけたその店には、「カリー灯」で学んだ味と、自分なりに磨き上げたオリジナルのスープカレーが並んだ。

オープン初日、最初に訪れてくれたのは斉藤さんだった。
彼はゆっくりとスープを口に運び、微笑んだ。

「悠人、お前の味だな。」

その言葉に、僕は心の底から嬉しくなった。

スープカレーは、僕の人生を変えた。
寒い冬の日も、辛いことがあった日も、この一杯が僕を支えてくれた。
そして今、僕はその一杯を、誰かの支えになるものとして作っている。

スープカレーのスパイスの香りと共に、僕の物語はこれからも続いていく。