マヨネーズ狂想曲

面白い

田中一郎は、生まれつきマヨネーズを愛していた。
いや、もしかすると前世からマヨネーズに恋していたのかもしれない。
彼の人生は、マヨネーズと共にあり、マヨネーズによって彩られていた。

彼が初めてマヨネーズの魅力を知ったのは、幼稚園のころだった。
ある日、母親が作ったハムサンドに、いつもより多めにマヨネーズが塗られていた。
その一口目をかじった瞬間、彼は衝撃を受けた。
「なんだこれは……!」舌に広がる濃厚なコクとまろやかな酸味。
すぐさま、母親にこう頼んだ。

「ママ、もっとマヨネーズつけて!」

それからというもの、彼は何にでもマヨネーズをかけるようになった。
白米、味噌汁、卵焼き、果てはスイカやチョコレートにも。
「そんなものにかけるの?」と呆れる家族の声も、彼には届かない。
ただただ、マヨネーズの虜になっていた。

高校生になる頃には、彼のマヨネーズ愛はさらに深まっていた。
昼食の弁当には、マヨネーズのボトルが常に添えられ、部活の後にはマヨネーズを舐めて糖分補給をするほどだった。
友人たちは最初こそ驚いていたが、そのうち慣れ、「あいつはそういう奴だから」と受け入れていた。

大学に進学し、一人暮らしを始めると、彼のマヨネーズライフは加速した。
冷蔵庫には各メーカーのマヨネーズがずらりと並び、日によって使い分ける。
カロリーを気にするどころか、「マヨネーズは生きる活力」と豪語するようになった。

そんな彼が転機を迎えたのは、就職活動のときだった。
面接の自己PRでつい口を滑らせてしまったのだ。
「私は何にでもマヨネーズをかけます!」面接官は一瞬驚いた顔をしたが、やがて興味を示した。
「それほど好きなら、弊社の商品開発部で活躍できるのでは?」そう言われ、彼はマヨネーズを製造する食品メーカーに採用されることになった。

入社後、彼は情熱を注いで新しいマヨネーズの開発に取り組んだ。
「もっとコクを!」「酸味のバランスを!」と試作を繰り返し、ついに画期的な商品を生み出した。
その名も「極(きわみ)マヨ」。
濃厚さと後味の軽さを両立させたそのマヨネーズは大ヒットし、彼の名は社内で伝説となった。

そして数年後、彼はついに夢を叶える。
自身が開発したマヨネーズ専門レストランをオープンしたのだ。
店の名は「マヨ天国」。
オムライスやハンバーグはもちろん、デザートにまでマヨネーズを使用した斬新なメニューが並び、マヨネーズ愛好家たちの聖地となった。

今も彼は、厨房で新たなマヨネーズの可能性を探求している。
彼にとって、マヨネーズとは単なる調味料ではない。
人生そのものなのだ。