幼いころから、真琴(まこと)は牛乳が大好きだった。
小学校の給食で出される牛乳瓶を、友達が飲み残すと必ず「それ、もらってもいい?」と尋ねる子だった。
友達も慣れていて、真琴のために残してくれることもしばしばだった。
「そんなに好きなの?」と不思議そうに尋ねられるたびに、真琴は笑って「だって美味しいんだもん!」と答えた。
そんな真琴も高校生になり、学校では牛乳の話をすることは少なくなった。
それでも家では相変わらず、冷蔵庫には常に牛乳がストックされていた。
母が「また買ってきたの?」と笑うほど、真琴はスーパーで特売があるとつい買い足してしまうのだ。
ある日、真琴は地元の商店街で行われた「牛乳祭り」というイベントのポスターを見つけた。
「牛乳を使ったスイーツ試食会」や「牛乳の歴史講座」、さらには「搾乳体験」まであるらしい。
牛乳に目がない真琴は、さっそく参加を決めた。
祭り当日、真琴は会場に到着するなり、その雰囲気に心を奪われた。
白と青を基調にした装飾、牛のマスコットキャラクター、そして何より、辺り一面に広がるミルクの香りが彼女を迎えてくれた。
試食会では、地元の牧場が作った新鮮なミルクプリンやチーズケーキを味わい、その濃厚な風味に感動した。
「こんなに美味しい牛乳を作る人たちがいるんだ」と心から感謝の念を抱いた真琴は、次の搾乳体験にも参加した。
初めての搾乳は少し難しかったが、牧場主の優しい指導のもと、なんとか数滴のミルクを絞り出すことができた。
そのミルクを飲んでみると、真琴は目を輝かせて「こんなに新鮮な牛乳、初めて飲んだ!」と感激した。
その帰り道、真琴はふと思った。
「私、もっと牛乳について知りたい。そして、みんなにこの美味しさを伝えたいな。」
そう思うといてもたってもいられなくなり、彼女は自宅でインターネットを駆使して牛乳に関する情報を集め始めた。
栄養価や乳製品の作り方、さらには世界各地の牛乳文化について調べるうちに、彼女の好奇心はどんどん広がっていった。
その結果、大学進学を控えた真琴は進路を農学部に決めた。
「牛乳を通じて、もっと多くの人に笑顔を届けたい。」そんな夢を抱いて彼女は勉強に励んだ。
大学では乳製品の開発に関わる研究に熱中し、さらに地元の牧場とも連携して新しい牛乳スイーツを作るプロジェクトを立ち上げた。
真琴の牛乳への愛は、ただの「好き」を超えて、彼女自身の人生を大きく変える原動力となった。
そして何年か後、彼女はついに「牛乳で世界を笑顔にする」という夢を叶えるため、オリジナルブランドの乳製品を立ち上げた。
その製品には、彼女が最初に飲んだ新鮮な牛乳の味が詰まっていた。
真琴は今も変わらず、毎朝コップ一杯の牛乳を飲む。
そして、その味を噛みしめながら、これまでの道のりと、これからの可能性に思いを馳せるのだった。