ハリネズミのハリオと新しい家

動物

ある静かな森の中に、小さなハリネズミのハリオが住んでいました。
ハリオは、苔むした木の根元に掘った自分の家が大好きでした。
家は小さいながらも居心地が良く、どんぐりや木の実を蓄えた倉庫も備えています。
しかし、ある日、森を覆う嵐がやってきました。
激しい雨と風が何日も続き、ついにハリオの家は浸水して住めなくなってしまいました。

「これは困ったぞ」とハリオはため息をつきました。
「新しい家を探さなくちゃ。」

翌朝、ハリオは少しだけ荷物をまとめ、旅に出ることにしました。
荷物といっても、小さな袋にどんぐり数個とお気に入りの木の葉のブランケットだけです。
ハリネズミのハリオにとって、家を離れるのは初めての経験でした。

まずハリオが向かったのは、森の中でも一番背の高い松の木が立ち並ぶエリアでした。
ここなら嵐の影響を受けにくいかもしれない、と考えたのです。
しかし、松の木の根元は他の動物たちの巣が多く、空いている場所が見つかりませんでした。
リスのロッタが言いました。

「ハリオ、松の木の根元はもういっぱいだけど、小川の向こうに広がる草原なら、いい場所が見つかるかもしれないわ。」

ハリオはロッタにお礼を言い、小川へと向かいました。
小川を渡るのはハリネズミには大変な作業でしたが、運良く倒れた木が橋のようになっていました。
その橋を渡り終えると、目の前に広がる緑の草原が現れました。
ここなら静かで、周りには食べ物も豊富にありそうでした。

しかし、草原で新しい家を探していると、突然ウサギのジャンが現れました。

「ハリオ!ここに穴を掘るのはやめてくれよ。僕たちの仲間がたくさん住んでるんだから。」

ハリオはジャンの言葉にがっかりしましたが、ウサギたちの住処を邪魔するわけにはいきません。
仕方なくまた荷物をまとめ、別の場所を探しに行くことにしました。

次にハリオが訪れたのは、森の東端にある静かな竹林でした。
竹林には風が心地よく吹き抜け、緑の葉が優しい音を奏でています。
ここならば落ち着いて暮らせるかもしれない、とハリオは思いました。
竹の根元を掘り始めると、地面が柔らかく、掘るのがとても簡単でした。

しかし、少し掘り進めると、地面からモグラのモコが顔を出しました。

「ちょっと待った、ここは僕のトンネルの一部だよ!」

ハリオは驚いて手を止めました。
「ごめんよ、モコ。君のトンネルだとは知らなかった。」

モコはにっこり笑って言いました。
「いいんだよ。でも、もっと南の方にある丘の上なら、きっと良い場所が見つかると思うよ。」

モコのアドバイスを受けて、ハリオは丘へ向かいました。
道中で出会ったフクロウのオルガが、ハリオに励ましの言葉をかけてくれました。

「新しい家を見つけるのは大変だけど、諦めなければきっと見つかるわ。」

丘に到着したハリオは、見晴らしの良さに感動しました。
ここからは森全体が見渡せ、空気も澄んでいます。
地面も硬すぎず、柔らかすぎず、家を掘るには最適です。
ハリオはさっそく掘り始め、新しい家を完成させました。

新しい家は以前の家よりも広く、日当たりも良い場所にあります。
近くには小川が流れ、食べ物を探すのにも便利です。
ハリオは新しい生活に胸を躍らせました。

「ここが僕の新しい家だ!」とハリオは声をあげました。

こうしてハリオは、苦労の末に新しい住処を見つけ、再び安心して暮らせる日々を手に入れたのでした。
そして森の仲間たちに助けられた経験を胸に、次に誰かが困っていたら、必ず力になろうと心に決めました。

それからというもの、ハリオは森での新しい暮らしを楽しみながら、仲間たちと助け合いの日々を送っていきました。