シマエナガの雪の日の冒険

動物

冬の終わりが近づく北海道の森に、シマエナガの小さな家族が暮らしていました。
彼らはまるで雪玉のように真っ白な羽毛に包まれた小さな鳥で、寒さに強く、仲間たちと寄り添いながら冬を越すのが上手です。
この日も冷たい風が吹き、雪がしんしんと降っていましたが、シマエナガたちは元気いっぱいに森の中を飛び回っていました。

その中に、まだ幼いシマエナガのヒナ「ユキ」がいました。
ユキは好奇心旺盛で、何にでも興味を持つ元気な子でした。
「ねぇ、あの丘の向こうには何があるの?」と、母親に尋ねました。

「向こうには大きな川があるけれど、今日は雪が降ってるから危ないわ。明るい日が来るまで待ちなさい」と母親は答えました。

けれどもユキはどうしてもその川を見たくてたまらなくなり、家族が目を離した隙に小さな翼を広げて飛び立ってしまいました。
雪が降りしきる中、ユキは一生懸命に飛びました。
雪の森を抜け、木々をかき分け、ようやく川が見えるところまで来たとき、突然の強い風が吹きつけ、ユキの小さな体はぐるぐると舞い上がり、川の近くの木の枝にしがみつくのがやっとでした。

「うわぁ、すごい風だなぁ」とユキは小さな体を震わせました。

枝に掴まってしばらく休んでいると、近くから声が聞こえてきました。
「何をしているんだい?こんな寒い日に一人でここまで来るなんて、勇気があるんだねぇ」声の主は、年老いたフクロウの「ソラ」でした。
ソラはその森で一番年上のフクロウで、賢さと優しさで皆に親しまれていました。

ユキは少し恥ずかしそうに、「大きな川を見たくて…でも、思ったよりも風が強くて…」と小さな声で答えました。

「ふむ、そうか。川は確かに大きくて美しいけれど、君のように小さい体には、今日の風は少し強すぎたかもしれないね」とソラは優しく言いました。
「だが、せっかくここまで来たのだから、少し休んでから川の美しさを見せてあげよう」

ソラはユキを守るようにして風から遮り、ユキはその温かさに少し安心しました。
二人はしばらくしてから、川の方へと飛んでいきました。
雪が降る中、川は静かに流れ、氷がキラキラと光っていました。
ユキはその美しさに見とれてしまいました。
「こんなに綺麗なんだ…」と、思わずつぶやきました。

ソラはニコリと微笑んで言いました。
「この川のように、森の中にはたくさんの美しい場所がある。けれど、自然はいつも優しくはない。今日はたまたま私が近くにいたから良かったけれど、君一人だと大変なことになったかもしれない。家族が心配しているだろうし、そろそろ帰った方がいいね」

ユキは少し肩を落としましたが、ソラの言葉を理解しました。
「ありがとう、ソラさん。僕、一人で来てしまって、ちょっと怖かった…」

「うむ、それもまた大切な経験だよ、ユキ。怖い思いをしても、こうして無事に帰れることが一番大事だ」とソラは力強くうなずきました。

ソラに導かれて、ユキは無事に家族のもとへ戻ることができました。
家族はとても心配していたので、ユキを見つけると大喜びでした。
「もう、勝手に飛び出すなんて、どれだけ心配したと思ってるの!」と母親が叱りながらも、抱きしめてくれました。
ユキはその温かさに、家族のありがたさを感じました。

それ以来、ユキは森の中を飛び回るときも、家族や仲間を大切にするようになりました。
ソラの教えを心に刻み、彼はいつかまた冒険に出る日を夢見ながら、今日も仲間たちと一緒に北海道の雪景色を楽しんでいます。

そしてユキの心には、大きな川と、それを見守ってくれたフクロウのソラの姿が、いつまでも大切な思い出として残り続けました。