5秒先の未来

不思議

陽介は特別な能力を持って生まれた。
その能力とは、5秒先の未来が見えるというものだ。
幼い頃からこの力に気付いていた彼は、周囲にそれを秘密にしていた。
しかし、その能力が陽介の生活を大きく変えていくのは時間の問題だった。

ある日、陽介は友人とカフェで話している最中に未来の映像を見た。
その映像では、カフェに車が突っ込んできていた。
陽介はすぐに友人を引っ張り、二人はカフェの外に飛び出した。
ほんの数秒後、カフェに車が突っ込んできた。
陽介と友人は無事だったが、カフェの中には怪我人が出た。

友人は驚きと恐怖で陽介を見つめ、「どうしてわかったんだ?」と尋ねた。
陽介は真実を告げるかどうか迷ったが、結局「直感が働いたんだ」とだけ答えた。

この出来事がきっかけで、陽介は能力をもっと積極的に活用することを決意した。
彼は交通事故や火事などの災害から多くの人々を救うために、自分の能力を使い始めた。
彼の行動は次第に注目を集め、新聞やテレビで取り上げられることも増えていった。

しかし、陽介の能力には限界があった。
5秒という短い時間では、全ての問題を解決することはできなかった。
また、未来を変えることにはリスクも伴った。
ある日、陽介は5秒先に大きな爆発が起こる映像を見た。
彼は急いでその場にいた人々に警告し、避難を促したが、全員を助けることはできなかった。
彼自身も爆発に巻き込まれ、重傷を負ってしまった。

病院のベッドで目を覚ました陽介は、自分の限界を痛感した。
しかし、それでも彼は諦めなかった。
自分が持つ力を最大限に活用し、少しでも多くの人を救いたいという思いが彼を突き動かしていた。

リハビリを経て、再び活動を始めた陽介は、以前よりも慎重に、計画的に動くようになった。
彼は警察や消防署と連携し、自分の能力を最大限に活用できるよう努めた。
彼の行動は次第に評価され、多くの人々から感謝の言葉を受けるようになった。

ある日、陽介は街を歩いていると、5秒先の未来に自分が見知らぬ女性に出会う映像を見た。
映像の中で、その女性は陽介に何かを伝えようとしていた。
現実の世界でも、数秒後にその女性が現れた。
彼女は息を切らしながら、陽介に「あなたが陽介さんですね?」と尋ねた。

陽介は頷き、「そうだが、何か用かい?」と答えた。
女性は涙を浮かべながら「あなたに助けてもらったことがあるんです。私の息子が交通事故に遭いそうになったとき、あなたが助けてくれました。本当にありがとう」と言った。

陽介は驚きと喜びで胸がいっぱいになった。
「それは僕の役目だ。助けることができて良かった」と答えた。

その後、陽介とその女性は友人になり、彼女の息子とも仲良くなった。
陽介の人生は、人々との絆を深めながら、新たなステージへと進んでいった。

陽介の能力は、決して万能ではなかった。
しかし、それでも彼はその力を使って少しでも多くの人々を救い、幸せにすることを目指していた。
彼の旅はまだ終わっていなかった。
未来を見通す力を持ちながら、陽介は今日もまた、新たな挑戦に向かって歩み続けるのだった。