迷子の花束

ホラー

町の花屋で美しい花束が作られました。
その花束には、真っ赤なバラ、純白のユリ、深紅のカーネーションが織り交ぜられ、中央には一輪だけ奇妙な花が存在しました。
その花は、他の花とは異なり、色も形も不気味な輝きを放っていました。
花屋の老婦人は、その花の名前すら知らないまま、その花束を丁寧に包装しました。

その晩、花屋は町で孤独な少女のことを思い出しました。
彼女は孤立し、友達もいなく、家族にも疎まれていると聞き及びました。
老婦人は、その花束が少女に勇気と幸せをもたらすことを願い、彼女の元へと届けることを決めました。

翌日、花束を持った老婦人は、少女が森の奥に住む老婆の家を訪ねました。
老婆は、その町で最も古く、不思議な力を持つ魔法使いとして知られていました。
彼女の家は、どこか不気味な雰囲気に包まれており、町の人々は敬遠していました。

しかし、少女は孤独な日々に嫌気がさしており、老婆の魔法には興味を抱いていました。
花束を手にして、彼女は森の奥へと向かいました。
途中で老婆が警告したとしても、彼女は勇気を振り絞りました。

少女が老婆の家に到着すると、老婆は不思議な眼差しで彼女を見つめ、その花束を受け取りました。
老婆は深い感謝を示し、少女には何か大切なことを話そうとしましたが、そのとき、一輪の奇妙な花が蕾を開きました。

その花は、不気味な笑い声を上げながら成長しました。
老婆は驚きの表情を浮かべ、その花が「迷子の花束」として知られていることを悟りました。
この花束を受け取る者は、次第に周りの人々から忘れ去られ、孤独な運命に見舞われるのです。

老婆は慌てて少女に警告しましたが、花束の魔法を解く方法を知らないことを告げました。
少女は戸惑いながらも、花束の魔法を解くためにどうすれば良いのかを問いました。
老婆は「真実の愛と勇気を持つ者だけが、その呪いを解くことができる」と答えました。

少女は希望を抱きながらも、魔法を解く手がかりを探すことができませんでした。
彼女は再び町に戻り、しかし、それ以来、町の人々から忘れ去られることで苦しむ運命となりました。
友達も家族も彼女の存在を忘れ、彼女は完全に孤独に包まれることとなったのです。

老婆はその後も、迷子の花束を誰にも渡すことはありませんでした。
しかし、時折、森の奥から悲しげな笑い声が聞こえてくるという噂は、町の人々の間に永遠に残りました。